DATE2025.01.06 #受賞・表彰
天文学専攻の紅山仁博士が第41回井上研究奨励賞を受賞
天文学専攻学術振興会特別研究員の紅山仁氏が、第41回井上研究奨励賞を受賞しました。
紅山氏は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻在学中に、地球接近小惑星をテーマとする複数の研究を行いました。地球接近小惑星は地球に近づく軌道をもつため空を高速に移動する天体として観測されます。時には地球に衝突し社会に影響を与えることもあります。このことから地球上の水や生命の起源の解明、隕石の衝突による被害の軽減、太陽系内の物質の輸送機構の解明などの観点で近年注目を集めています。地球接近小惑星はサイズが小さい個体ほど数が多く、地球との衝突頻度もより高いことが知られています。しかし観測の困難さから、これまでは直径100 m以下の微小小惑星に対する理解は十分でありませんでした。そこで紅山氏は東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所が運用する口径1.05 mシュミット望遠鏡を用いて、地球近傍を通過する小惑星の発見を目的とした可視光による空の広域サーベイに取り組みました。機械学習モデルを用いた解析パイプラインと追観測システムを開発し、大学院在学中に50個超の地球接近小惑星の独自発見に成功しました。更に紅山氏は自らが発見した個体を含む多数の地球接近小惑星に対して、即時に明るさの時間変化(ライトカーブ)を密に観測することで、地球接近小惑星の自転速度の分布に上限が存在することを世界で初めて明らかにしました。その他にも研究代表として国内外の望遠鏡の観測時間を多く獲得し、また複数台の望遠鏡を用いたキャンペーン観測ではリーダーとして共同研究者を束ね多くの科学成果を創出しました。こうした成果が評価され、今回の受賞につながりました。
紅山氏は学位取得後、コートダジュール天文台ラグランジュ研究所の客員研究員として太陽系小天体の熱赤外線観測に焦点をあてた研究に従事されています。今後のますますのご活躍を期待しています。
(文責:天文学教育研究センター/准教授 酒向重行)