DATE2023.08.04 #イベント
広報委員会
東京大学大学院理学系研究科・理学部では、日々の研究や教育活動のひとコマを切り取ってその美しさを競う「東京大学理学部イメージコンテスト2023」を2023年5月26日~7月25日に開催しました。
オープンキャンパスの一環として開催していたイメージコンテストですが、今年もオープンキャンパスがオンライン開催だったため、単独での開催となりました。
今年は理学系の学生、教員、学内スタッフから30作品の応募がありました。
理学部広報委員会の構成メンバーによって投票が行われ、得票数上位3作品が優秀賞に選ばれました。
優秀賞受賞者には、表彰状及び賞品の図書券を贈呈いたします。
優秀賞を含め、コンテスト出品作品の一部は東大理学部イメージバンクにも掲載の予定です。
最優秀賞
「The warm heart of worms」生物科学専攻 睡眠生理学研究室 助教 宮崎慎一
線虫を顕微鏡でのぞいたらこの姿。思わず興奮して何枚も撮影してしまいました。アシンメトリーなハートも味があって、何ともHeart-w"o"rmingではないでしょうか?
優秀賞
「香りの中継地点」生物科学専攻 助教 森川勝太
嗅覚細胞の軸索が収斂される糸球体に、嗅球の僧帽細胞が樹状突起を伸展している。
優秀賞
「月食と天王星食」物理学専攻 博士課程1年 直川史寛
昨年11月、月食中の月が天王星を隠すという珍しい現象が起こりました。その直前の瞬間を駒場キャンパスの望遠鏡とスマホで捉えました。月食で赤く染まった月と青い天王星のコントラストが印象的でした。
応募作品(以下、応募受付順にご紹介します)
「落ち石拾い」地球惑星科学専攻 修士課程1年 吉原慧
地球惑星環境学科のシチリア巡検での写真です。地中海の雲一つない青空と海を横目に石膏を採取する構図が、ミレーの「落穂拾い」に重なり、どこへ行っても地球科学に向き合い続ける環境学科らしい写真に感じました。
「蜜に届け」生物学科 学部4年 本吉亮介
クリンソウの鮮やかな花色に誘われ飛来したハナバチは、長い花筒の奥に隠された蜜を吸おうと口吻をぐいっと突き刺す。この時、顔面が花蕊の先端と接触して花粉の授受が成される。送粉共生の山場を切り取った1枚。
「膨張宇宙の未来図」天文学専攻 特任研究員 平野信吾
宇宙が進化する様子のシミュレーションを行っていたところ、設定を間違えて未来まで進めてしまいました。現在は無数の銀河でにぎやかな宇宙ですが、その老後は静かなものになるようです。
「超伝導量子ビットの健康診断」素粒子物理国際研究センター 特任助教 新田龍海
窒化チタンと高純度アルミニウムで作られた超伝導量子ビット(大きさ:数百μm)が、サファイア基板上に並んでいます。極低温での振る舞いを予測するために、四端子プローブを用いた抵抗測定がおこなわれています。
「海底に沈む星や花」附属臨海実験所 主事員 小森いづみ
臨海実験所で行われる海底生物調査の際に、砂の中から見つかるトリノアシ(ウミユリ)の骨片。花や星のような美しい造形に魅了され、また色彩や形状の変化や付着物から、海底での時の経過を感じさせる。
「骨に残るストレスの跡」生物科学専攻 修士課程1年 平野力也
眼窩の上壁にあらわれる多孔性の変化-クリブラ・オルビタリア-。幼少期に栄養不足や感染症などのストレスを受けて鉄欠乏性貧血を発症すると生じると考えられている。古人骨に見られるクリブラ・オルビタリアからは、当時の厳しい生活とそれを生き抜いた人々の様子を窺い知ることができる。
「ヤブカラシの花色は3度変わる」生物科学専攻 教授 塚谷裕一
ヤブカラシの花床はオレンジからピンクに変わると思われていましたが、実はよく調べてみるとピンクからまたオレンジに戻り、さらに再度ピンクになってから散ることが判明しました。こんなに何度も変わる事例の発見はヤブカラシが初めてです。
「光が通った道」物理学科 学部4年 亀田崚
4年次の物理学科の必修科目、特別実験にて。
私たちは、研究室内で一辺が100m程度の非対称マイケルソン干渉計を作成しており、その際Delay Lineという鏡を向い合わせ何度も光を往復させて距離を稼ぐ際に撮影した写真です。
Delay Lineで使用する鏡上で、写真のように綺麗な円状に光を配置して反射させないと、光が干渉しないのです。
「Gazing Car」Creative Informatics Project Lecturer Chia-Ming Chang
We developed a novel interface called "Gazing Car," which utilizes "eyes" to indicate the attention of a self-driving AI. This innovative interface aims to enhance car-to-pedestrian interaction. Our research findings have demonstrated that the implementation of these "eyes" may significantly reduce traffic accidents.
「実験計画+機械学習+単要素拡張の有機合成」化学専攻 准教授 池本晃喜、教授 磯部寛之
有機合成化学での反応条件最適化に新しい戦略を導入しました.実験計画法に機械学習を加え,さらに伝統的手法である要素拡張法を導入したものです.有機小分子を複数取り込める大きな環状分子を合成しました.
「ヒキガエル幼生の組織切片」地球惑星科学専攻 修士課程2年 山田太河
オタマジャクシを8 μmの薄さに切って軟骨を青、細胞核を紫、細胞質をピンクで染めています。右が口側、左が尾側です。一見地道な作業である細胞の形態観察を通じて進化という大きなテーマに挑んでいます。
「ナノスケールの生物多様性」総合研究博物館・地球惑星科学専攻(佐々木猛智研究室) 博士課程1年 吉村太郎
生命の造り出す結晶―バイオミネラリゼーションには、多様で優美なかたちが存在します。これらの結晶は、古代湖に生息する巻貝の貝殻を電子顕微鏡で捉えたものです。微細な世界から、現在の生物多様性がどのように形作られてきたのかを解き明かしていきます。
「地層にねむる天の川」地球惑星科学専攻 博士課程1年 石㟢美乃
今から約2億5千万年前の堆積岩の地層です。屋外で見るとただの灰色の露頭にしか見えませんが、研磨することで砂と泥の織りなす美しい堆積構造が現れます。金色にきらりと輝く黄鉄鉱が夜空にまたたく星のようです。
「聴覚星雲」生物科学専攻 助教 森川勝太
情動中枢である扁桃体の神経細胞にシナプス接続する聴覚皮質の神経細胞群を、狂犬病ウイルスを用いて標識した。
「城ヶ島」地球惑星環境学科 学部3年 古田大樹
城ヶ島巡検の際に撮影した鍵層のひとつです。きれいな火炎構造を真ん中に据え、層全体を撮影しました。
「渋谷の街」地球惑星環境学科 学部3年 古田大樹
自然地理学の巡検で訪れた渋谷スカイから撮影しました。地理的な要素が街づくりに生かされている様子から、地理学と人間の結びつきがよくわかります。
「地に灯る炎」地球惑星環境学科 学部3年 古田大樹
城ヶ島巡検の際に撮影した火炎構造です。
「幾星霜」地球惑星環境学科 学部3年 古田大樹
実習で貝化石を採取した際に撮影しました。幽玄な森の中に遥か昔の生物が眠っていました。
「調査の見学者」地球惑星環境学科 学部4年 大野智洋
地質調査の実習中にどこからともなく飛んできて学生の腕に止まったオニヤンマです。間近で見た経験は少なかったため, 実習中最も盛り上がった記憶があります。
「鍵」地球惑星環境学科 学部4年 大野智洋
地質調査実習中の鍵層の記録写真のひとつです。光の加減が好みだったため出しました。
「星の子」天文学専攻/Kavli IPMU 修士課程1年 田中匠
この画像はジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡のいくつかのフィルターで観測した星の像を、観測画像から再構成したものです。光学系での回折などの影響で、不思議な雪の結晶のような像が実現されています。
「若林鉱物標本」総合研究博物館/地球惑星科学専攻 教授 三河内岳
若林鉱物標本は、三菱鉱業の鉱山技師だった若林彌一郎が収集した鉱物標本で日本三大鉱物標本の一つ。1934年に鉱物学教室(現地球惑星環境学科)に寄贈されたもので、現在は総合研究博物館に収蔵されている。
「マグマ発生の煌めき」地球惑星環境学科 学部3年 高橋慶多
2019年熊本県でマグマ由来の砂白金が新しく発見された。イソ鉄プラチナ鉱からなる砂白金で、マグマ分化時にPtの分配が起こり形成された。この写真は撮影者が今年採取したもので、今後の研究材料にする予定だ。
「The Mosaic detector in the scattering chamber」Center for Nuclear Study Department of Physics Doctoral Student Jiatai Li
A mosaic type Si array named Mosaic was made by aligning 128 pieces of Si photodiodes on the readout Printed Circuit Boards. It was developed to measure the charged particles produced in the heavy ion fusion reactions.
「舌に広がる細胞の海」地球惑星科学専攻 修士課程2年 山田太河
駒場キャンパスで採集した卵から育てたニホンヒキガエル幼生の舌の断面。舌は魚類から陸上脊椎動物へ進化する過程で新たに獲得された器官である。両生類の舌は変態時に発生し、進化の謎を解く鍵と目される。
「10の23乗を体感する」化学専攻 博士課程1年 和山稔明
顕微鏡越しにバイアルを見るとたくさんの結晶が見えます。この結晶は有機小分子が中に入っている金属錯体です。普段見ることのできない、溶媒に溶けているアボガドロ数(6.02×10^23)の有機小分子を体感することができます。
「西表島の夜の出会い」生物科学専攻 修士課程1年 須田崚
西表島で開催された野外実習の最後の夜、散策中に動物の鳴き声が聞こえた。息を潜めて暗い森の中を覗くと、イリオモテヤマネコの姿があった。