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理学部ニュース

「「細胞」は失敗を恐れない」

上村 想太郎(生物科学専攻  教授)

上村 想太郎 著
「「細胞」は失敗を恐れない」

Laule'a出版(2023年)
ISBN  979-8856495101

生命は絶妙な階層構造から成り立っている。たとえば,臓器は細胞の集団であり,細胞は分子の集団であり,分子は原子の集団である。生命活動を理解するうえで集団を集団として捉えるのではなく,集団を構成している個々の要素の特徴をそれぞれ理解する学問を1分子・1細胞生物学と呼ぶ。

1分子・1細胞の研究をしている筆者は,その研究によって個々の要素が均一ではなく,ばらばらで不均一な特徴を持っていること,そしてDNAの複製ミスや分子の識別ミスなどの失敗が頻繁に起きることでその不均一な状態を保っていることこそが生命の根源的な仕組みであると考えるに至った。

1分子・1細胞の世界を覗くには,特殊な光計測が必要である。上村研究室では,蛍光顕微鏡やマイクロデバイス,ナノポア計測技術などを駆使して分子や細胞の世界を覗いている。また本研究科で開講されている「光計測生命学特論」では,生物科学専攻のみならず化学専攻や物理学専攻の教授たちがオムニバス形式で講義することで,技術や分子・細胞の世界を学ぶことができる。

本書は専門的な内容をわかりやすい表現で書いているので,高校生,教養学部生だけでなく,小中学生,大学生,研究者にも読んでほしい。また失敗の捉え方を理解し,他人の意見に左右されることなく,やりたいことを目指してチャレンジしていく勇気をもつようになってほしい。


 

理学部ニュース2024年3月号掲載

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