研究科長から研究科そして社会のみなさまへのご挨拶

研究科長から研究科そして社会のみなさまへのご挨拶

研究科長 相原博昭

研究科長 相原博昭

科学は自然に潜む普遍的真実のたゆみない追求です。本理学系研究科・理学部は、1877年(明治10年)に礎を持つ、科学の研究と教育を行う我が国を代表する組織です。輝かしい歴史を誇る本部局の運営に携わる機会を与えていただいたことは身に余る光栄です。研究科のさらなる発展のために力を尽くしたいと思います。研究科構成員の教員、職員そして学生のみなさまのご協力をよろしくお願いいたします。

東日本大震災から約1年後に本職に就任したこともあり、研究科の役割、そして自らの役割についてあらためて考えてみました。大震災そして福島原発事故以来、科学それも基礎科学の意義について議論されることが多くなりました。基礎科学は震災や事故を防ぐために役に立ったのか、社会の基礎科学への投資は果たしてそれに見合う成果を得ているのか、基礎科学は日本の将来のために本当に役に立つのか等々、科学イコール善あるいは価という図式に大きな疑問が投げかけられているように思います。理学系研究科は自然科学の基礎を研究し、教育する組織です。しかも個人の好奇心に基づく研究(curiosity-driven research)をするのが本研究科の真髄です。私は、個人の好奇心に基づく研究に絶対的な価値があると信じます。それは、好奇心こそが、新しい物を作るあるいは新たな発見をするという創造活動の最も有効で持続的な原動力だと思うからです。科学は、日々に行われる個人の創造活動の集合体ですし、原発、エネルギー、温暖化、環境など、我々が直面する様々な課題の解決そして社会の発展には、ゼロから価値を創り出す知的行為が不可欠です。この知的創造活動の継続が社会の課題解決への鍵であり、科学はその創造活動を支える基礎に他なりません。科学に興味を持つこと、科学に何らかの形で携わることは、人間が生きて行く上でだれにでも自然に発生する現象です。理学系研究科は、そのことを特に強く感じ、また意識している人間の集まりだと思います。自然に対する興味を大切に思い、その思いに忠実な人間の集まりです。我々個人の毎日の好奇心に基づく活動が、科学を作り出し、その科学が社会に影響を与え、社会を変えます。理学系研究科の教員、研究者は、その科学のプロとして、生み出す結果に大きな責任を負っています。

人が科学を作り出すと同時に、科学もまた人を作ります。自然科学に価値を見いだす人間の集団であるが故に、理学系研究科は何よりもまず「個人」を大切にします。教員、職員、学生のだれもが、身分、年齢、性別、国籍にかかわらず、科学の前では対等な一個人だからです。理学系研究科の教育は学生が自らの力で答えを追求し、さらには、自らの力で新たな課題を発見できるようになることに最大の力点を置いています。そのために科学の多様な分野やテーマから、自らの好奇心で専門を選んでもらい、その専門を究めてもらいます。科学の専門を究めることは同時に広い視野の獲得につながります。 科学のある分野に自らの好奇心で積極的に取り組んだ学生は、強くタフになり、グローバルマーケットでの競争力を獲得し、寛容で広い視野を持ち、どのような職種や職域においてもリーダーシップを発揮できる人間に成長します。科学で人を育てることによって、理学系研究科は社会に貢献します。

Faith in Science、科学への信念を持ったプロ集団は必ず未来を拓くことができると信じます。人が科学を作り、科学が人を作ります。私の使命は、この信念に忠実であると同時に、現実の課題に積極的に取り組み、研究科の研究教育環境の改善に努めることだと思っています。

われわれ理学系研究科・理学部は、大学が進むべき道を照らす力強く明るい光の元でありたいと思います。「学」の重心は「理」にあります。あらためてみなさまのご協力をお願い申し上げます。