研究科長からのご挨拶

研究科長からのご挨拶

研究科長 武田洋幸

研究科長 武田洋幸

理学系研究科・理学部の歴史は1877年(明治10年)まで遡ります。創立以来、日本の、そして世界の理学研究・教育の中心として、多くの成果と人材を輩出してきました。そして昔も今も、自然の摂理を純粋に追及するプロフェッショナルな集団です。私はこのような部局に所属していることを誇りに思ってきましたが、さらにこの度その運営にも携わる機会を与えていただいたことは身に余る光栄であると同時に、身の引き締まる思いでおります。

理学はあらゆる自然現象を研究対象としています。そしてその研究動機は探究心(好奇心)です。物質を構成する素粒子から、細胞や生物個体、地球規模の生態系、そして宇宙へ、我々の探究心はとどまるところをしりません。探究心に基づいた研究は人類が営む崇高な創造的活動の一つです。理学系研究科・理学部の先輩または在籍されていた小柴先生(2002年)、梶田先生(2015年)、大隅先生(2016年)のノーベル賞は、いずれも人類の知の地平を拡大する画期的な成果に与えられたもので、まさに理学の神髄というべきものでした。理学の研究によって、我々は自然の摂理をより深く理解し、またそこから科学技術へ応用できるシーズを得て、人類社会を発展させてきました。一方、「自然」はもっと深淵で、手ごわく、時として我々の慢心や驕りに強い警鐘を鳴らします。2011年3月11日の東日本大震災や福島原発事故がその象徴です。「自然」と向き合っている私達は常に謙虚な気持ちを忘れてはなりません。予断を断って、観測や観察を通して「自然」に真摯に耳を傾け、実験により「自然」に謙虚に語りかける。この繰り返しこそが研究の原点です。最近よく話題になる研究不正などとは無縁の世界です。人類社会は現在多くの地球規模の難問、例えば資源の枯渇、自然災害、環境破壊、気候変動など、に直面しています。これらの問題に対しても、多様な切り口を持ち、事象を深く理解する理学への期待がさらに高まっていると感じています。

理学系研究科・理学部は、憲章にある通り、これからも自由な研究環境の下、研究の多様性を尊重し、最先端の知を創造し、それを次世代へ継承していきます。そのために、融合研究や境界領域の研究に挑戦します。理学系研究科は伝統ある学理体系を有する専攻に加えて、フォトンサイエンス研究機構、生物普遍性研究機構、宇宙惑星科学機構を設置しました。それぞれの機構では、専攻や部局が異なる、多様な考えと能力を有する研究者が集まっており、既存の分野に収まらない新しい学術がこれらの中から生まれるはずです。私はこのような取り組みを支援していきたいと思います。

国際交流はさらに先端知の創造を加速します。私はとくに若い学生の国際交流は重要と考えています。すでに、優秀な学部生を海外に派遣するSVAPプログラムや海外の優秀な学部生を選抜して受け入れるサマープログラム(UTRIP)を実施しています。そして平成26年度からは、日本人及び外国人編入生を対象とした英語講義による学部後期課程コース「グローバルサイエンスコース」を、平成28年度には、英語だけで学位が取得できる国際卓越大学院コースを新設しました。若い人たちが、異質な文化に触れ、世界を肌で感じ、迷いなく世界へ羽ばたけるように全力でサポートします。

私は、理学系研究科・理学部を構成する教職員、学生の皆さんとともに、理学の研究・教育活動を通して、人類社会の持続的・平和的発展に少しでも貢献していきたいと思っています。ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。