研究科長からのご挨拶

研究科長からのご挨拶

研究科長 福田裕穂

研究科長 福田裕穂

私は、東京大学理学系大学院を卒業したあと、いくつかの大学でお世話になり、20年前に東京大学に戻ってきました。そうした私にとって、日本で最も伝統があり、数多の俊英を輩出してきた理学系研究科・理学部の運営に携わる機会をいただきましたことは、身に余る光栄です。微力ではありますが、先達の築いた歴史を礎にして、日本の科学研究の先鋒をめざす理学系研究科のさらなる発展に努めたいと思っています。

理学は、森羅万象を理解するための学問で、人類最高の文化の1つです。そこでは、自然の深淵な原理だけでなく、そこに到るヒトの営々たる歴史性をも垣間見ることができます。自然科学は、19世紀以降大発展を遂げ、1877年創立の東京大学理学部もこの科学の発展の一翼を担ってきました。なかでも、2002年の小柴先生のノーベル賞受賞は記憶に新しいものです。その結果、今では、私たちは、私たち人類が誕生する遙か以前の宇宙・地球・生命の歴史、生命の基本的な設計図、物質や力の原理などを理解できるようになっています。しかしながら、まだ残された謎も多く、理学系研究科の研究者や学生は、これらの謎を解くために、真摯に研究に励んでいるのだと思います。私は、この真摯な研究とそれを支える次世代の研究者の育成、これこそが理学系研究科の根本にあるべきものであり、これを全面的に支援したいと考えています。

一方で、2011年3月11日の東日本大震災への科学の対応力の乏しさやSTAP細胞問題にみられる科学における真摯さの欠如などにより、社会では科学に対する信頼が揺らいでいると感じています。自然の原理を知るために絶え間ない努力を続けていると、自然がこれまで誰にも知られていない秘密を見せてくれる瞬間に遭遇します。私たちは、この瞬間が楽しくてたまらないので、理学研究をしているのではないかと思っていますが、私はこの楽しさにもとづく真摯さを大切にしたいと考えています。このような楽しさを大切に考えるのであれば、捏造などの問題は起こるはずはないはずだからです。同時に、私たちは社会に向けての鋭敏なアンテナを張っている必要があると感じています。このアンテナを通してキャッチした社会の問題について、私たちの専門的かつ深い知識や研究・教育の実践を積極的に役立てるべきだと思っています。この社会との積極的な連帯と真摯な科学の追究があって始めて、社会の科学に対する信頼を取り戻せるのではないかと思います。

理学は世界を相手にする学問です。そのために、海外との研究連携や学生の国際性教育が欠かせません。理学系研究科では、世界各地に共同研究拠点があります。アタカマでは、現在、理学系研究科主導で口径6.5mの世界最大規模の赤外線望遠鏡を建設しつつあります。理学部サマースクールUTRIPでは、海外の優秀な学部学生を受入れ、一方、理学部学生国際派遣プログラム(SVAP)では、理学部学生を海外の大学に派遣しています。また、理学部では、国際化を一層進めるために日本人および外国人編入生を対象とした英語講義による学部後期課程コース「グローバルサイエンスコース」を開設しています。これからも、世界の理学研究のセンターであり続けるために、研究、教育の両面からの国際交流を推進します。

私は、世界の研究者と協力し、理学の研究と教育を実践するとともに、社会と連帯して、日本および世界の発展に貢献すべく努力を続けていきたいと考えています。理学系研究科構成員をはじめ、多くの皆様の協力を、どうぞよろしくお願いいたします。