研究科長からのご挨拶
研究科長からのご挨拶
研究科長 山形俊男
2009年度から理学系研究科長・理学部長を務めています。 明治10年の開設以来、理学の中心として長い歴史をもつ部局の運営に携わる機会を頂くことは身に余る光栄です。 先達の築いた輝かしい歴史を礎にして、更なる未来を開拓すべく力を尽くしてゆきたいと思います。 構成員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
約140億年前のビッグバンに由来する宇宙の進化のなかで、 40億年ほど前に太陽系の水惑星<地球>において環境と生命の共進化が始まりました。 生命の進化の過程で600~700万年前に登場した人類は取り巻く環境を知的に認識するだけでなく、 火や道具を用いて、自ら環境に働きかける能力を備えるに至りました。 10数万年前にアフリカに現れた現生人類は、環境に適応し、活用して、より安寧な生を求めると共に、 論理の世界を構築し、時の流れを明確に意識して歴史を生み、次第に複雑な装置や機器も編み出して、 現在の文明社会を築き上げてきました。 本来の知的好奇心は極微の世界から宇宙まで豊かな階層構造を示す自然の仕組みを解き明かしてきました。
私たちはこのような人類の最も根源的な知的営み、 すなわち<自然の仕組みと理を知る>という目標を共有し、知の継承と創造に勤しむ集団です。 しかし、広く世界を見渡すと、様々な困難に遭遇して、生を全うすることすら大変な人々が数多く見られます。 そのようななかにあって、人類の進化を促してきた根源的な営みに日々参加できることは極めて恵まれたことです。 知の継承や創造に伴う喜びや新鮮な感動を社会に伝達し、 相互に啓発しあってゆくことも私たちの重要な任務といえるでしょう。
理学系研究科・理学部の構成員の多くは何らかの形で職業として理学に係わっているか、 あるいは将来において係わることになるでしょう。 好奇心に基づく<自然の仕組みと理を知る>営みが自己満足に陥らないためには、 知を創造する技も磨く必要があります。 知の創造には論理的な思索力を強化することが不可欠です。 それには確かな言語と確かな知識無くしては不可能でしょう。 朽ちた木材で家を建築しても、崩れ去るのは明らかです。 しっかりした技を磨く場を更に充実する必要があると考えています。 また、創造された知は伝達されねばなりません。 少なくとも同業他者に伝達されることでオリジナリテイが検証され、 もし、それが新しい扉を開くものであれば、世界の中で大きく発展してゆくでしょう。 新しい知は本質的に革新的なものであり、コミュニテイには簡単には受け入れられないはずです。 それを主張する強い精神が必要になるゆえんです。 ガリレオ・ガリレイの<それでも地球は廻る>、孟子の<千万人と雖も吾往かん>の精神と言ってもよいでしょう。 世界の仲間と自在に交流し、切磋琢磨し合い、その中で自らのオリジナリテイをしっかり示してゆく人材が、 いまこそ求められている時はありません。
<自然の仕組みと理を知る>という目標を共有し、確かな知の継承と創造に勤しむ皆さんと共に、 研究室を超え、専攻を超え、部局を超え、大学も、 国境も軽々と超えて自由に交流する場をますます充実させるように努めてゆきたいと思います。


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