メールアドレス | y-tanaka@eps.s.u-tokyo.ac.jp |
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居室 | 理学部1号館714号室 |
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研究分野
測地学, 地震学, 固体地球科学
研究テーマ
研究内容の概要
測地学は,その名が示すように計測技術と一体となって発展してきました.
測地観測の人工衛星や地上測定機器には,原子時計やレーザー干渉計といった現代物理の粋が結集されており,1,000 km先の地面が1 mm動いたり,地球の重力(1G)が10億分の1変化したりするのをほぼリアルタイムに捉えることができます.こうした技術を用いて非常に精密に測ることから見えてくる固体地球の変動や,その地球表層流体(大気・海洋・氷床等)との相互作用を明らかにする研究を行っています.研究手法は,数値シミュレーション,フィールドでの観測,人工衛星データ解析,基礎理論の構築など多岐にわたります.以下に研究の一例を示します.
比較的長期にわたる変動に,後氷期回復や巨大地震に伴う地殻変動があります.このような変動はマントルの粘性に起因しますが,この30年来,近似的にしか解くことのできなかった粘弾性変形の基本方程式を厳密に解くことに成功しました.この手法を用いて,地質学的時間スケールにおける地形形成速度と,測地学的に観測されている現在の変形速度との不整合の問題に取り組んでいます.また,このような基礎的な理論は,惑星内部の構造を調べるのにも用いることができます.
半日~数年スケールで生じる地殻変動のゆらぎも見えてきました.月や太陽の運動や黒潮大蛇行がこのようなゆらぎを引き起こし,地震活動に影響を与えうることが分かりました.プレート境界には,通常よりも弱い力で断層すべりが発生する領域があり,そこが外力の影響を強く受けているのだと考えられます.
フィールド観測として,南海トラフ域や石垣島で重力観測を実施しています.スロー地震時に重力異常が発生することを捉えつつあります.地球深部の水が動いている可能性があり,海溝型地震のメカニズムやプレート沈み込み帯における水の循環過程の解明に役立つことが期待されます.
地球には様々な顔があります.地質学的な時間に起きる大きな変動に比べて一見穏やかに見える「現在の姿」にもたくさんの謎があります.過去に学ぶとともに,時々刻々変化する繊細な姿を捉え,その原因を明らかにしていくことが未来の予測につながります.今後,様々な地球物理・地質・化学的アプローチとも連携し,それらの解明に挑んでいきたいと考えています.
キーワード
測地, 地殻変動, 重力, 地震, 相対論的測地学, 潮汐, スロースリップ, 粘弾性