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学生たちの声

ヒトゲノム解析パイプラインのコードを奏でる

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−自然と音楽が美しい国、オーストリアでの挑戦−

生物科学専攻 修士課程2年生

Hitoshi Mastuo

松尾 仁嗣

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インスブルック医科大学

オーストリア

得意だったのは物理と化学だったけど–––。

高校生の頃から、医学・薬学とかの医療系に対してとても興味がありました。研究職にも少し興味があったので、それならば一番環境の良い東大を目指そうと決めました。でも中高時代に好きだった科目は物理や化学だったので、生物にすごく興味があったとか、そういうわけではないんです笑

大学1年生のときの授業で知り合った先生が とても良くしてくださり、何度も研究室にお邪魔していく中で「研究職もいいな」と具体的に考えるようになったのですが、その先生の研究分野がまさに生物情報でした。生物情報は比較的新しい分野で当時の自分にはまだよくわからない世界でしたが、数学的な発想で生物を捉えることや、医療分野への応用の幅広さがとても新鮮で魅力的でした。

ずっと留学には興味がありました

UGRASP*プログラムには学部4年の時に応募して、卒業する直前にオーストリアのインスブルック医科大学に行きました。Zlatko Trajanoski教授は、指導教員の角田達彦先生に紹介していただいた先生です。留学先でどういうことを経験したいかを角田先生に伝えると「この先生はどう?」と、いくつかリストをもらったうちのひとつに、その研究室がありました。Trajanoski先生は、僕が普段お世話になっている東大病院の先生とも一緒に研究をされていたこともあって、 そこに留学しようと決めました。

自然と音楽の中で過ごした、オーストリアでの研究

Trajanoski研究室からの眺め

実際に行った研究をわかりやすく説明すると、たとえば「どうして癌になるのか?癌になった人に対して、どうした治療ができるか」というのは個人個人で異なり、同じ治療方法でも効く・効かない人がはっきりとわかれてしまう。そういう差が生まれる原因の一つがゲノム情報の違いだけど、ゲノム情報はとても膨大でどこにその原因があるのかを見つけるのは簡単ではない。そこで、個々のゲノム情報をもとに治療を考える上で必要な特徴の一部を知ることができる解析パイプラインを、プログラミング言語を駆使して作る、といったものです。こうした研究が医療分野への応用に向けて進められていて、Trajanoski先生の研究室では、特に免疫療法を応用したがんワクチン開発を目指し、新しいプログラミング言語を学びながら自分でコードを書いたりしていました。

インスブルックは、自然豊かな都会という印象です。週末にロープウエイで山に登り、眼下に広がる自然や街並みの美しさにとても感動した記憶があります。住んでいたところの近くに日本人が経営する日本食レストランがあったので、ときどき、お米やお味噌汁を楽しみながら、普段の昼食は研究室のメンバーと一緒に学食を利用していました。研究室は色んな国の留学生もいて、僕のことはギリシャ人学生がよく面倒を見てくれました。研究のことはもちろん、日常の会話は英語なので、もう少し英語を勉強しなきゃいけないなと思うことも多かったです。ただ、普段の生活では、ドイツ語圏なので、スーパーでの買い物やパンを買うのも少し大変でした。

インスブルックの美しい山の上から

また、僕はピアノを弾くので、「ウィーンにも行ってみたい」と思ったことも、留学先にヨーロッパを選んだ理由のひとつでした。そう遠い距離ではなかったので、休日に電車でウィーンを訪ね、本場の音楽の雰囲気に触れる機会があったのも、とても良い経験でした。

パンデミックという経験

ちょうど留学も終わりに近づいた頃、COVID-19パンデミックは起こりました。現地で借りていたアパートの退去期間がこのせいで早まってしまうなどのハプニングもありましたが、国際化推進室のみなさんや角田先生などにも相談しながら、帰国までは Trajanoski先生の自宅でホームステイをさせていただけたのは本当によかったです。研究のまとめ自体はほとんど終わっていたのですが、残念ながら、現地で研究発表をする機会は得られませんでした。COVID-19パンデミックが落ち着いたら、Trajanoski先生や研究室のメンバーとも、またやりとりができると良いなと思います。

将来の夢

オーストリアでの研究は、これまで自身が行ってきた内容とは違う新しい挑戦でした。ヒトゲノムの解析パイプライン作りのためのプログラミング経験を積めたことで、生物と医療分野との繋がりへの理解が、より深まったと思います。

「東大での勉強を修了したら、しばらくは海外経験を積んでみたい、そしてまた日本に戻って研究を続ける–––」 UGRASPでの留学体験を通じて、そのビジョンがより明確になったと感じています。

たとえば、海外でポスドクでの経験を積んだあと、また日本に戻ってきて、自分の研究室を持ってみたい。ラボのメンバーで研究の議論をすることはもちろん、イベントなどで交流を深められたらいいな、なんて思います。子供の頃からの夢だった医療分野の研究にずっと関わっていたい、そう思います。

留学を経験したいと考えているみなさんへのメッセージ

留学してみたい。そう頭で思ったら、臆せず行動することでチャンスはうまれます。海外での生活や国外の研究室で研究活動の経験を積むことのはもちろん、自分の興味・趣味もひとつの原動力にして、チャレンジしてみても良いと思います。渡航先や研究分野で迷うことがあれば、指導教員の先生に相談してみるのも良いでしょう。

英語の勉強は本当に大事で、さまざまな国の人のいる研究室では、あたり前に英語でのコミュニケーションが必要とされます。住んでいるうちに慣れてきて話せることも多くなりますが、留学すると決まれば、自然に英語を勉強するようになります。理学部にはこうした多くの海外派遣プログラムが用意されています。滞在中の生活面でのサポートも十分です。迷うことがあれば、国際化推進室へも相談してみてください。

*UGRASPは2018年より開始された、理学部学生(4年次後期向け)海外派遣プログラムです。海外の大学や研究機関に渡航し、現地の教授や研究者と共同研究を行うことを目的としています。

※2021年取材時 文/武田加奈子、写真/貝塚純一

生物科学専攻 修士課程2年生
Hitoshi Matsuo
松尾 仁嗣
2015 年渋谷教育学園幕張高等学校卒業、東京大学に入学。理学部4年次にUGRASPでオーストリアのインスブルック医科大学での研究生活を経験。2019 年より理学系研究科生物科学専攻の角田研究室に所属。
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