WEB MAGAZINE
menu
logo_UTokyo
logo_UTokyo

TAGS

特集記事

リガクル座談会

理学系研究科の学生たちの多彩な物語

April 3, 2023

research01

理学系研究科では、さまざまな学歴や経験を持つ学生が教育や研究に励んでいます。この座談会では、4学科の学生たちが、研究内容、学生生活、将来の夢などを語ってくれました。

▶クイズ:人類学の学生が調査した人間の頭蓋骨は何個?答えは記事の後半でご確認ください。

まずは自己紹介からお願いします。

ジユー・イェ:私は中国から来ました。地球惑星科学専攻修士課程1年生です。気候力学と海洋物理学について研究しています。

大島由佳:博士課程1年生で、物理学専攻の安東研究室に所属しています。私の研究内容は主に重力波検出器の開発と宇宙のダークマター*1の探索です。

キャサリン・ハンプソン:私はイギリス出身です。文部科学省の奨学生*2として研究するために来日しましたが、そのまま修士課程へと進み、生物科学専攻で人類学を中心とした博士号を取得しました。先週は口頭試験を合格しました。

全員:おめでとうございます!

キャサリン・ハンプソン:ありがとうございます。研究の傍ら、バーやビール工場でアルバイトをして過ごしています。

西村啓佑:修士課程2年生で、情報理工学系研究科の加藤研究室に所属しています。オペレーティングシステム を研究しています。

ビールを作っているキャサリン・ハンプソンさん(写真提供:ハンプソンさん)

理学に興味を持ったのはいつからですか?

キャサリン・ハンプソン:もともと、理学と歴史に興味がありました。だから、理学と歴史の結合である人類学が好きなのです。イギリスのオックスフォード・ブルックス大学では、人類学と日本学とを主専攻として同時に学びました。骨学のマニュアルを書いたティム・D・ホワイト先生や、日本の人類学のゴッドファーザーである鈴木尚先生に影響を受けました。

西村啓佑:高校時代、趣味でゲームを開発したくて、プログラミングをはじめました。しかし、ゲームをつくるのは難しく、数学とコンピュータの基礎的なスキルが必要だと気づきました。その時から、理学の基礎的な技術を身につけるように尽くしてきました。今はコンピューター科学を専攻しています。

大島由佳:両親が化学企業の研究者なので、幼い頃から科学に興味がありました。特に宇宙物理学が好きで、子どもの頃から研究者になりたいと思っていました。宇宙物理学を志したのは、宇宙の大きさに惹かれたからです。

ジユー・イェ:中国の小学生に聞くと、大人になったら研究者になりたいと答えるのは半分くらいでしょう。しかし、中学生になると「理学はつまらないし、難しいし」と興味を失う人がほとんどです。そんな中でも私は、理学は難しいけれども、つまらないものではないと思い、勉強を続けました。高校卒業後は地球物理学を選択したのですが、学べば学ぶほどその魅力を知ることで楽しくなってきました。

ハンプソンさんとイェさんに質問です。理学系研究科に入る前に日本とどんな接点がありましたか ?

キャサリン・ハンプソン:大学生の時に4年間日本語を勉強し、1年間東京で交換留学生として過ごしました。

ジユー・イェ:日本の文化や漫画が好きです。一番好きなのは「Bocchi the Rock!」です。中国の友達と日本のゲームもしました。

ジユー・イェさんがコミックマーケット(C100)を訪れました(写真提供:イェさん)

来日する前に日本に対して抱いていた先入観や、住んでみて気づいたことはありますか?

キャサリン・ハンプソン:東京に引っ越す前に、何度か来日したことがあります。思っていたよりも便利で、夜型の私にとっては、夜中の2時にコンビニに行けるのはありがたいですね(笑)。

ジユー・イェ:日本に来る前は、日本人はみんなアニメや漫画が好きだと思っていましたが、そんなことはないんだと分かりました。また、日本人は親切で、私の周りの人たちはみんなフレンドリーです。友達が居酒屋に連れて行ってくれたり、飲み会に誘ってくれたりすることもよくあります。

大島さんと西村さんは、外国人の同僚と英語で会話した経験は?

大島由佳:私の経験では、質問すること、英語で話すことをためらわないことが大切だと思います。初めての国際学会で、発表は無事に終わりましたが、質疑応答でうまく答えられませんでした。それ以来、コミュニケーションがうまくいかないときには、黙っているのではなく、積極的に相手の質問を確認するようになりました。

西村啓佑:私も人見知りです。言いたいことがあっても、躊躇してしまうんです(笑)。今でも、自分の英会話力にはあまり自信がありません(笑)。でも、何も言わないと自分の思いが伝わらないので、何かを表現することは大切だと実感しています。

イェさんとハンプソンさんは、日本語を話のレベルは?

ジユー・イェ:友達とゲームの話をするときは、日本語で話しています。でも、日本語の授業で習わなかったので、専門用語がわからないことがあります。

キャサリン・ハンプソン:その気持ち、よくわかります。来日してすぐは、日本語での日常会話に問題はありませんでしたが、語学学校では専門用語は学べません。研究室の同僚は日本語で専門用語を使うので、骨の名前や考古学の論文などを日本語で読むことに慣れなければなりませんでした。日本語を学びながら研究をするのは大変なことで、時間がかかります。

ジユー・イェ:日本語が分からなくても何とかなることもあります。レストランでは、料理の写真を指差して聞けばいいんです(笑)。

みなさんに質問です。東京大学大学院・理学系研究科を選んだ理由は?

西村啓佑:自分の興味に最も適している研究室の指導准教授はその分野の専門家でした。そのため理学系研究科への進学は迷いがありませんでした。

大島由佳:私の場合、理由は単純です。東京大学は日本のトップ大学なので、子どもの頃から東京大学に入るのが夢でした。さらに、東京大学の前期教養学部のシステムは、すぐに専攻を決めなくてもいいということで、高校時代の私にはとても魅力的でした。宇宙物理学に興味があったので、最終的には理学部に進学しました。

ジユー・イェ:理由は一緒です。東京大学は日本のトップ大学であり、第一志望校でした。でも、入試に合格できるかどうか不安でした。中国の高校時代の友人も日本への留学を希望していました。そこで、二人で東京大学を受験することにしました。今は二人とも本郷キャンパスで勉強し、ルームメイトになっています。

キャサリン・ハンプソン:私の専門は比較的狭い分野です。中世の日本の骨を研究することに興味があり、東京大学はその骨を所蔵していて、研究するのに最適な場所でしたので、願望しました。また、以前東京に住んでいたことがあり、東京が大好きだったのも理由のひとつです。

現在の研究内容についてお聞かせください。

西村啓佑:オペレーティングシステムに関する研究をしています。修士論文では、自動運転車向けのオペレーティングシステムの実装に挑戦しています。自動運転車にはたくさんのセンサーデータが使われており、それを高速に処理する必要があります。もし、処理に時間がかかると、交通事故につながる可能性があります。もちろん、安全性は非常に重要ですから、目標は、安全第一の自動運転車用のOSを開発することです。

大島由佳:安東研究室では、ブラックホールなどの天体からの重力波を検出することを目標とし、重力波検出器の開発に取り組んでいます。検出器にはレーザー干渉計が使われますので、通常はレーザーやミラー、電気回路などを扱います。また、宇宙を満たしている謎の物質である暗黒物質の探索にも取り組んでいます。重力波の検出も暗黒物質の探索も、同じような手法で行っています。

ジユー・イェ:エルニーニョ*3とインド洋ダイポール*4の2つの気候現象の関連性を研究しています。 エルニーニョは、太平洋の水面が異常に暖かくなることで定義される気候パターンです。インド洋ダイポールは、インド洋の海面水温が赤道域の西側で異常に高くなり、赤道域の南東側で冷たくなることで形成されます。両者の関連を研究することで、より的確な天気予報ができるようになるでしょう。

キャサリン・ハンプソン: 私は、1950年代に鎌倉の遺跡で発掘された人骨を扱っています。奇妙な埋葬穴から発見されたもので、主に頭部と胴体の一部、そして数体の全身が見つかっています。主に男性の遺体で、外傷の跡がありました。そこで、300個の頭蓋骨を調査したチームは、彼らが戦闘で死亡した可能性があると結論づけました。しかし、彼らは骨のごく一部しか調べていなかったですね。また、最近の発掘調査で、周辺から大量の遺骨が発見され、その多くが外傷の痕跡がないことから、中世を通じて埋葬地として使われていた可能性があることがわかりました。私はその理由と、彼らと彼女らの死には他の理由があったのかどうかを調査しました。約777個の頭蓋骨を調査し、年齢、性別、武器による外傷の有無を調べました。その結果、答えは私たちが考えているよりもさらに深く興味深いものであることがわかりました。

海外留学経験は?

西村啓佑:今年の夏、3ヵ月間フランスに行きました。師匠とは、オープンソースのソフトウェア開発を推進するプロジェクトに参加した時に、オンラインで知り合いました。その後、連絡を取って、INRIA(フランス国立情報学自動制御研究所)のビジターとして受け入れてもらいました。これは、私にとって素晴らしい経験でした。チームメンバーとの関係構築には、直接会ってのコミュニケーションが良いということに気づきました。

フランス・サクレ・クール寺院(Basilique du Sacré-Cœur)の前に立っている西村啓佑さん。(写真提供:西村さん)

大島由佳:昨年の夏、国際学会で発表するためにイタリアに行きました。学会の夕食会では、世界中から集まった博士課程の学生たちとの会話で盛り上がりました。学会終了後は、会場近くの研究室を訪問してセミナー発表もさせていただき、ホストの研究室のメンバーからたくさんの鋭い質問をいただきました。今回の出張では、学会とセミナー発表がとても勉強になりました。

キャサリン・ハンプソン:学生時代の恩師から、日本で骨を学ぶために文部科学省の奨学金に応募するよう勧められました。応募したのですが、競争率が高くて1年目は落ちました。でも、次の年に応募したら、受かって、日本で修士号を取得することができました。この奨学金は博士号まで延長することができます。博士号を取得するためにお金をもらえる機会は断われないことですね。運に恵まれ、感謝しています。

今後のキャリアへの抱負をお聞かせください。

大島由佳:まず、2年後に博士号を取得したいです。その後、研究者の道を歩みたいと思っています。現在、主に女子高生を対象としたアウトリーチ活動を通じて、宇宙のすばらしさを伝えています。その活動も続けていきたいと思っています。

「銀河学校」という高校生向けのプログラムで講義を行う大島由佳さん。(写真提供:東京大学木曽観測所)

ジユー・イェ:修士課程を修了したら、博士課程に進みたいと思っています。その後は、まだ決まっていません。学界や産業界で研究者として働くかもしれません。

西村啓佑:私も修士課程を修了したら、博士課程に進みたいと思っています。研究は続けたいのですが、まだ具体的には考えていません。プログラミングをやりたいです。

キャサリン・ハンプソン:色々と考えないといけないですね(笑)。ポスドクとして学界の機会もありますし、結婚の予定もあります。特にコロナ禍と博士論文のことを考えると、休息がとりたくなるんですね。

これから大学院に進む学生へのアドバイスは?

大島由佳:一つの道にこだわらないで、広い視野を持つこと。チャンスを逃さないこと。

ジユー・イェ:基礎的な数学と物理の学習にもっと時間をかけた方が良いと思います。

西村啓佑:イェさんの意見に賛成です。情報科学の基本的な理解があれば、とても役に立ちます。基礎的なことを学びましょう。

キャサリン・ハンプソン:自分の専門外の人と話をしたり、会ったりすること。勉強に役立つかもしれないし、将来のために人脈を広げるのは重要だと思います。視野を広く持ち、できるだけ多くの人に会うようにしましょう。ガンバレ(頑張れ)。

皆さん、ありがとうございました。そして、これからも頑張ってください。

*1 ダークマター
https://science.nasa.gov/astrophysics/focus-areas/what-is-dark-energy

*2 文部科学省の奨学生
https://www.mext.go.jp/en/policy/education/highered/title02/detail02/sdetail02/1373897.htm

*3 エルニーニョ
http://www.bom.gov.au/climate/enso/history/ln-2010-12/ENSO-what.shtml

*4 インド洋ダイポール
http://www.bom.gov.au/climate/enso/history/ln-2010-12/IOD-what.shtml

文章は簡潔にするために編集されています。
▶クイズの答えはなんと777個の頭蓋骨です。

※Year of interview:2023
文/パラヴァリ ・ネッティミ・ ラヴィンドラ
写真/広川 智基

生物科学専攻博士課程3年生
Katherine Hampson
キャサリン・ハンプソン
イギリス、ブリストル生まれ。オックスフォード・ブルックス大学で人類学と日本学のダブルメジャーで卒業。2016年春に文部科学省奨学生として来日、2018年東京大学大学院理学系研究科生物科専攻修士課程に入学し、2023年3月には同大学院で博士号を取得予定。バーと酒造場でビール作りなどのアルバイトをしている。
物理学専攻博士課程1年生
OSHIMA Yuka
大島 由佳
東京都出身。2015年3月筑波大学附属高等学校卒業。2016年東京大学教養学部入学。同大学理学部物理学科、理学系研究科物理学専攻修士課程を経て、2022年4月より博士課程へ進学。宇宙の謎を解明したいと思い続け、現在は重力波検出器の開発やダークマターの探索を行いながら、宇宙物理学の魅力を高校生に伝える活動もしている。
情報科学専攻修士課程2年生
NISHIMURA Keisuke
西村 啓佑
広島県出身。2017年3月広島学院高等学校卒業。同年4月東京工業大学電気電子系に入学し、2021年4月より東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学修士課程に進学。プログラミングとコンピュータをこよなく愛している。
地球惑星科学専攻修士課程1年生
Ziyu Ye
ジユー・イェ
中国・広東省出身。2016年武漢大学地球物理学科卒業。2021年東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の東塚知己研究室の研究生として活動ののち、2022年4月より同専攻の修士課程に入学。修士課程修了後は博士課程に進み、統計的手法やディープラーニングを用いた気候力学の研究を希望している。
TAGS

image01

キュリオシティ・ドリブンで真理を追究する

April 3, 2023

image01

物理と統計の目で生命を理解する

April 3, 2023

image01

数学と物理がクロスオーバーする場所

February 1, 2023