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学生たちの声

科学者を目指すということ

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生物科学専攻 博士課程3年

ジェイソン・チョック・クワン・リョン

Jason Cheok Kuan Leong

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清華大学(中国・北京市)

中国・マカオ生まれ

偶然の出会い

父が医師、母が看護師であったため、高校生の時に医学書を読んだりしていました。生物学は多くの謎ばかりで、例えばなぜ人の体が今のかたちになっているのかを知りたいと思い、生物科学専攻を志望しました。

私にとって生物学は、芸術と科学の中間に位置する分野みたいだと思います。例えば、恣意的に物事を記憶したり、ラベルを貼ったりすることは生物学の主流ですが、そこにはルールが少ないように思いました。あるいは少なくとも授業で言及されるほどのルールがない場合もあって、少し混乱することがあります。だからこそ、私は生物学に潜在する原理を見つけることに興味があり、それが進化発生生物学の大きな目的の1つだと考えます。

進化発生生物学は、エボデボ(Evolutionary Developmental Biology:Evo-Devo)とも呼ばれ、進化生物学と発生生物学を融合させた学際的な分野です。基本的には胚を通して進化の原理を探ります。

清華大学の学部生だった頃、ヨーロッパで開催された進化生物学の学会に偶然参加し、この分野の魅力に取りつかれました。それを専門とする研究室を探し始めたところ、理学系研究科生物科学専攻の入江直樹准教授の本に出会いました。

彼の著書は発生期の進化の歴史をたどるもので、とても興味をそそられ、考えさせられる内容でした。そこで私は、彼が新しい大学院生を受け入れているかどうか調べてみることにしました。入江先生にメールをして話を聞き、当時生物科学専攻必須だったGREの生物学テストの準備も始めました。アメリカの大学院にもいくつか出願しましたが、幸運にも、文部科学省の奨学生として入江先生の指導のもとで学ぶことになったのです。

教科書の日本語から応用まで

幼い頃にひょんなことから日本語を学びました。日本への旅行から戻った母は、なぜか私をマカオの日本語学校に入れたからです。私は無事に日本語能力試験のN1に合格し、入江先生の著書「胎児期に刻まれた進化の痕跡」と出会いました。自分の発見を素人にもわかるように説明されていて、とても読みやすい本でした。

十分に日本語を勉強していたつもりでしたが、5年前に日本に来たときは、やはりカルチャーショックがありました。研究室の仲間とは次第に日本語と英語が混在するようになり、私の日本語能力もさらに成長したと思います。専門的な用語を日本語で読むことに慣れていなくて苦労しましたが、シンポジウムに多く参加することで、分野の基本的な用語の多くを学ぶことができました。

今では日常生活で日本語を使うことに抵抗がなくなり、あらゆる場面で日本語を使うようになっています笑

進化生物学の研究を続ける

博士課程からの研究は、進化生物学における派生度という概念をさらに拡大することに着目して進めています。この概念は、保存性という非常によく似た概念に由来しています。保存性とは進化の中で維持されている遺伝子や形質を表しますが、派生度とは進化で新しく獲得または喪失された遺伝子や形質も含めて考える度合いです。この2つの概念は、長年にわたってあいまいなまま使われてきましたが、その違いを指摘する人もいませんでした。私はこの違いを明らかにする必要があると感じていました。

だからこそ、このプロジェクトに真剣に取り組みました。非常に困難で、指導教官から他のことをやってみたらどうかと言われましたが、最初に出した結果が当初の仮説に近かったこともあって、どうしてもあきらめたくありませんでした。この2つの概念の違いを整理し、データを分析する方法の開発までに、修士課程に進学してから4年もの間、試行錯誤を繰り返しました。この中で、胚の分子データを解析するためにバイオインフォマティクスの手法を用いました。プログラミングは、私たちが収集したビッグデータを通じて進化発生学的な理解を深めるために必要不可欠なツールです。学部生のときは数学やプログラミングなどは難しいと感じていましたが、大学院で勉強するようになり、今ではRとPythonでコードを書けるようになりました。

このプロジェクトの研究成果は、第2回アジア進化生物学学会(2nd AsiaEvo)に参加していた他の生物学者から高く評価され、学生ポスター賞を受賞することができました。最終的には論文も書き上げ、今年の初めに出版できました。本当に、努力した甲斐がありました。

アカデミックな世界で道を切り拓き続ける

ゆくゆくは生物学の「教科書」に新しい見解を加えていきたいんです。なぜなら最近の生物学教育は暗記や細部にこだわりすぎて、基本的な原理で考えることをほとんど教えていません。私は卒業後も研究室に残り、次の研究課題を立ち上げてポスドクを目指そうと思っています。日本は研究者にとってとても良い環境だと思います。なぜなら他の国々と比べて、理論的な研究を含む基礎研究のための環境が整っているからです。日本の科学者のレベルが高いことも相まって、私もこの中で切磋琢磨しながら成長し、将来は教授になりたいと思っています。

これから応募される方へのメッセージ

東京大学には、留学生支援室というカウンセリングやアドバイスをしてくれる場所があり、外国人留学生のために役立つサービスを提供しています。また、奨学金やビザなど、留学生を支援する理学部の国際チームも私たちの面倒を見てくれます。大学や大学院生活に慣れるまでに困ったことがあれば、留学生支援室と理学部国際チームの方々とたくさん相談することができました。

もちろん日本は研究だけでなく、生活・旅行などにも理想な国だと思います。私は休日など自由な時間を使って、観光や美術館巡りをしています。今年は私の日本でのバケットリストにもはいっていた直島に旅行にいきました。直島の自然環境に溶け込んだアートは世界一だと思います。

一番大切なことは、自分が純粋に興味のあることを研究することです。自分が本当に知りたいことに時間をかけて探求してください。熱意のない研究をしていると、将来的に楽しくなくなり、しんどくなりますから。

※2022年取材時
文/武田加奈子
写真/貝塚純一

生物学科博士課程3年
Jason Cheok Kuan Leong
ジェイソン・チョック・クワン・リョン
中国・マカオ出身。中国・北京の清華大学で学部を修了した後、2017年に東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻でさらに研究を進めるために来日した。博士論文の審査に合格し、2022年秋に東京大学から博士号を取得する予定。
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