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卒業生インタビュー

研究者も母親も。
やりたいことは欲張りに

理学系研究科天文学専攻 准教授

藤井 通子

December 22, 2021

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ずっと目指していた研究者の道を歩む天文学科の藤井准教授。母として研究者として、充実した日々を送る。それには、オランダで過ごしたポスドク時代の経験が活きている。

――どんな研究をされているのですか。

理論天文学の分野で、銀河や星団の形成・進化について研究しています。スーパーコンピュータでシミュレーションを行い、銀河や星団が、宇宙の歴史のなかでどのように形づくられ成長してきたかを探っています。重力波の検出は、近年の科学のビッグニュースの一つです。星団の中でブラックホールがどれぐらいつくられ、そこからいつ、どのように重力波が放出されるかの理論予測も研究テーマの一つです。

実は、もともとは観測をしたかったのですが、銀河や星団の進化を詳しく調べるには理論のアプローチが向いているようだと、思い切って理論の研究室を選びました。プログラミング初心者で不安もありましたが、頑張って勉強しました。

――東大で学位取得後は、オランダのライデン大学に赴任されたと伺っています。

指導教官だった先生のご友人が教授をされていたのがきっかけで、ポスドクとして採用していただきました。実は博士3年のときに結婚していて、夫を日本に置いての単身赴任です。海外で研究職を経験する最後のチャンスだと覚悟を持って臨みました。

オランダでの経験は今も大きな財産です。天文学専攻の博士課程の学生の約半分と、ポスドクのほとんどが外国人で、多様なバックグラウンドを持った人たちと触れ合うことができました。それも、オランダの天文学分野のユニークな育成方針のおかげです。自国の学生はポスドクで極力採用しない方針をとっていて、学生を国外に出して武者修行で育てているわけです。

多様なのは国籍だけではありません。日本の天文分野では、ポスドクの女性比率が1割を切りますが、オランダでは3割ぐらいが女性でした。大学院生やポスドクのなかには、結婚して出産もして、子どもを連れてオランダに来ている人もいました。旦那さんを母国に置いての母子国外赴任です。

――帰国後にお子さんを出産されてからは研究と育児の両立を続け、第二子の出産も間近と伺っています*。

来週が予定日です。オランダで出会ったたくましい同年代の女性研究者たちの姿に勇気づけられて、任期付きの前職中に第一子を出産しました。日本の天文学分野でも、産休や育休の制度はもちろん整備されていますが、女性研究者の絶対数そのものが少なく、制度にはさらなる改善の余地もあるのではと感じています。たとえばオランダでは、産前産後の休みは半年程度と短い代わりに、子どもが大きくなるまで男性も女性も週4日勤務、朝8時に来て5時に帰る人が多くいました。研究者も、自分の生活に合う働き方を選べるのが理想的です。いずれは、そうした制度づくりにも関わっていけるようになりたいと思っています。

――――学生のみなさんにメッセージを。

特に女子学生は、いずれは仕事か家庭かで悩む日が来るかもしれません。そんなときは、欲張ってどっちもやってみるようにしてください。ただし、すべてで完璧を目指すのは諦めましょう(笑)。完璧でなくとも、やるべきことをやっていればチャンスは来ます。東大女子には完璧主義が多いのも知っていますが、チャンスを気楽に待つのも生き抜くうえでは大事なことです。

*取材は2016年11月17日に実施。

※2017年理学部パンフレット(2016年取材時)
文/萱原正嗣、写真/貝塚純一

理学系研究科天文学専攻 准教授
FUJII Michiko
藤井 通子
2005年東京大学理学部天文学科卒業、07年同大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了、10年同博士課程修了。オランダ・ライデン大学での博士研究員、国立天文台での特任助教を経て2016年より現職。
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