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卒業生インタビュー

「研究が面白くて仕方がない」理学の醍醐味ここにあり

理学部卒、研究者たちのホンネ

April 1, 2021

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◎未知の世界を旅して、人類の未来を拓く

――まずは研究内容をお聞かせください。

柏原 数理科学研究科で、「偏微分方程式の数値解析」について研究しています。偏微分方程式は、複雑すぎて計算で解くことができません。そのため、離散化や近似という手続きを経て、コンピュータシミュレーションで近似解を求めます。「数値解析」では、離散化や近似の過程が数学的に正しいかを解析します。私は主に、流体の偏微分方程式を扱っています。

高橋 地球惑星科学専攻で地球化学を研究しています。私たちが目にする地球や環境で起きているマクロな現象が、どのような化学的素過程のうえに成り立っているかを、原子・分子レベルで解析しています。地球のあらゆる構成物は化学反応によって形成されています。その化学組成や化学反応過程を分析することで、その物質がどのようにつくられたかや、それがどのような環境だったかが分かります。一言で言えば、化学によって、地球の過去・現在・未来の姿を明らかにすることができるのです。それを私は「分子地球化学」と呼んでいます。

――研究のどんなところに魅力を感じていますか?

柏原 数値解析では、紙と鉛筆を使う証明による理論的アプローチと、シミュレーションを使った実験的アプローチの2つの方向性があります。片方がうまくいかないときはもう片方から攻めてみて、二刀流で取り組めるのがこの分野の面白さです。もう少し広く言うと、物事の原理を突き詰めて考えられるのが理学の魅力です。なかでも数学は、論理を厳密に突き詰められるのが醍醐味です。

高橋 原子・分子レベルのミクロな視点から、地球や宇宙というマクロな世界に迫れることに面白さを感じています。物質から、地球環境や宇宙のさまざまな謎を解明できるのです。研究者は、人類から未知の世界に遣わされている冒険者のようなものです。未知の暗黒の世界を旅して、そこでの発見を人類に還元する。人類の将来を背負った、非常にロマン溢れる職業だと思います。

◎就職活動を横目に、研究漬けの日々

――お二人が理学部に進学された理由をお聞かせください。

柏原 高校受験の勉強がきっかけで数学が好きになりました。いろいろな公式を組み合わせて答えを導き出す過程や、その道筋を論理的に証明していくところに惹かれました。物理も好きでしたが、数学の方が、より厳密に論理が求められることに魅力を感じました。進振りでは、実社会の課題に数学を応用する工学部の計数工学科も考えましたが、証明の過程がいちばん好きなので、数学科に進学しました。

高橋 僕はもともと化学科でした。高校生のころにオゾンホールが社会問題になり、環境問題に取り組みたいと思ったのがきっかけです。環境問題をやるなら物質が重要なので、だったら化学だろうと。当時は学科の編制が今とは違って、地球惑星環境学科はまだ存在していませんでした。

――そこからどのようにして研究者の道に進むことになったのでしょうか?

柏原 何が何でも数学者になろうと決めていたわけではありません。ただ、数学を使う仕事に就けたらいいなという気持ちはありました。自分が企業に就職するイメージが湧かなかったこともあり、研究者の道を行けるところまで進んでみようと思って今に至ります。ポスドクのときに結果を出せたのが大きかったかなと思います。

高橋 父親が研究者だったこともあり、自分も研究者になるんだろうと漠然と思っていました。大学院では、とにかく研究が楽しくて楽しくて。周りが就職活動をするなか、ひたすら研究に没頭していました。修士2年のときに自分の論文が学術雑誌に掲載され、研究の醍醐味の一端を味わえたことも大きかったですね。ただ、進路として具体的なことを考えていたわけではありません。博士3年になって、履歴書片手に研究所を訪ねたものの採用されず……。どうにかして、それまでの専門分野とはやや異なる、広島大学の地球惑星システム学科に応募し採用していただくことになりました。実はそのあとも大変で、もともと化学科出身だったので、岩石や鉱物の名前を覚えるのに苦労しました。ただ、若い時に境界領域の分野に飛び込んだことは、今の私の強みになっています。

◎研究者を目指すなら、まず理学から始めよ

――今後の展望をお聞かせください。

柏原 数値解析は、物理や化学、生物など、数学以外の分野とも連携することができます。そうした他分野の人たちと、一緒にプロジェクトを進めていけるようになりたいですね。もうひとつは、いま急速に社会に広まっているAI(人工知能)に、数学者として貢献したいと考えています。AIも数値計算を使っているはずなので、数値解析による貢献が可能だと思います。

高橋 研究者として最前線を走り続けたいと思います。ですが、ひとつのテーマだけで何十年も研究を続けることは容易ではありません。理学を学ぶことのいいところは、その基礎を土台にしてさまざまな分野へ応用可能なことです。私自身、幅広いテーマを扱っていますが、その土台には化学があります。学部や大学院生のころに身に着けた化学の手法を使って、地球上の多様な対象を解析しています。

柏原 基礎や原理は、学生のうちに学んでおいた方がいいですよね。先に応用を学んだ後に、基礎や原理を学び直すのは大変だと思います。

高橋 理学部は研究者養成機関です。研究者を目指すなら、学位をとってから40年近く最先端を歩み続けられるように、理学部で足腰を鍛えてほしいと思います。

※2019年取材時 文/萱原正嗣、写真/貝塚純一

理学部化学科卒業
理学系研究科 地球惑星科学専攻 教授
Yoshio Takahashi
高橋 嘉夫
1992年東京大学理学部化学科卒業、97年同大学大学院理学系研究科博士課程修了。広島大学理学部地球惑星システム学科にて助手、准教授、教授を経て2014年より現職。20155年に日本地球化学会賞、2016年に日本環境化学会学術賞を受賞。
理学部数学科卒業
数理科学研究科 准教授
Takahito Kashiwabara
柏原 崇人
2009年東京大学理学部数学科卒業、14年同大学大学院数理科学研究科博士課程修了。独ダルムシュタット工科大学数学科、岡山大学大学院環境生命学研究科、東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻にて博士研究員などを経て17年より現職。
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