附属臨海実験所は、神奈川県三浦半島の西南端に位置している。三浦市三崎町にあることから、「三崎臨海実験所」とも呼ばれている。半島は東を東京湾、西を相模湾に面し、実験所は2つの湾の交わる箇所にある。周辺海域では世界的にも稀な豊かな生物相が見られる。
その始まりは1886(明治19)年にまで遡る。世界有数の歴史を持つ臨海研究施設の設立には、我が国の人類学と考古学の礎をつくったエドワード・モース博士が関わっている。
モース博士は、本学が創設された1877年に来日、理学部動物学教室の初代教授に就任した。直後、博士は神奈川県下に一時的に臨海実験所を設置。日本政府に対して恒久的な実験所の建設を勧告していた。
三崎は、世界の宝石事情を一変させた地でもある。世界に名立たる真珠の「ミキモト」の誕生に、本実験所が深く関わっているのだ。同社創業者の御木本幸吉氏は、実験所が開発した養殖技術を活用し、現在の真珠産業の基礎を築き上げた。
20世紀に入ると実験所は研究を切り上げたが、約100年の時を経て再び両者の交流がはじまる。御木本氏の生誕150年にあたる2008年、ミキモトと東大によるシンポジウム開催がきっかけだ。
こうして再開した両者の交流は、さらなる展開を見せている。戦後、三浦市に短い間存在していた真珠養殖産業を復活させる「三浦真珠プロジェクト」を、東大はミキモトと三浦市の協力を得て進めている。三浦半島を再び真珠で輝かせる試みが進行中だ。
※2019年理学部パンフレット(2018年取材時)
文/萱原正嗣