――どんな研究をされていますか?
津波を予測する手法について研究しています。具体的には、シミュレーションと実際の観測値を融合して予測を出す「データ同化」という手法を研究しています。
この手法は大気科学で100年ほど前から使われていて、2015年に東大地震研究所の前田拓人先生が津波予測に応用されました。高い精度の予測が可能ですが、多くのコンピュータ資源が必要なのが課題でした。日本のように潤沢な計算資源があればいいですが、たびたび津波の被害に遭う、たとえばインド洋沿岸の国々では導入が困難です。同じ手法をベースに、どこでも入手可能なパソコン程度の計算資源で、正確かつ速い予測ができる手法を考案しました。論文は米国の学会誌に投稿し、2017年10月に公開されました。
――留学を決めたきっかけは?
学部3年の夏(2015年)、東大理学部の研究インターンプログラムUTRIP*1に参加しました。夏休みの6週間、ひとつの研究室に所属して研究を体験します。私がお世話になったのは、津波を研究されている佐竹健治先生の研究室です。そのとき、東日本大震災の被災地・福島を訪ねました。津波の被害も大きかった地域で、被害の痕跡がはっきりと残っていました。先進国の日本でここまで被害が大きくなるのなら、他の国ならどうなるのかと津波に関心を持つようになりました。帰国して学部を卒業後、佐竹先生の研究室に進学することを決めました。英語で学位を取得可能で、奨学金ももらえる理学系研究科のGSGC*2も留学の決め手のひとつです。
――東大理学系研究科の印象を教えてください。
先生のご指導を直接受けながら、自分の研究に取り組むことができます。研究者になるための姿勢や心構えも、折に触れて教わっています。東大の学生になれて幸運です。
*1 UTRIP: University of Tokyo Research Internship Program. p8参照
*2 GSGC: Global Science Graduate Course. p8参照
※2018年理学部パンフレット(2017年取材時)
文/萱原正嗣、写真/貝塚純一