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卒業生インタビュー

未来を切り拓く、ビッグサイエンスの力

カリフォルニア工科大学(Caltech)LIGO研究所 上席研究員

新井 宏二

December 20, 2021

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Caltechの新井上席研究員は、その“歴史的瞬間”の立役者の一人だ。理学系研究科在籍中に研究していた技術が、アインシュタインの予言の証明に、たしかに寄与したのだ。

――2016年2月、重力波検出の一報に世界が沸きました。

重力波は、アインシュタインの一般相対性理論の帰結として、1916年に予言されていた現象です。質量があるところは時空が歪み、質量が動けばその歪みが波として伝播する。それが重力波です。ただ、歪みはきわめて微小で観測は困難と考えられていました。1960年代後半に観測実験が始まったものの、半世紀ものあいだ検出されることはありませんでした。

私自身も学生のころから20年以上、重力波観測を目指してきただけに感慨深いものがあります。実は、観測装置には私が学生時代に研究していた技術も導入されていまして、「自分が貢献した装置が重力波を捉えた」ことを思うと無上の喜びです。

LIGOのハンフォード観測所
リビングストン観測所。ノイズによる誤観測を防ぐため、両者は3,002km離れている。©LIGO Lab

――具体的にはどのような技術でしょうか。

重力波は、レーザーと鏡を使って検出します。レーザー光を直交する二方向に分け、その先の数km離れた場所に鏡を置く。鏡に反射されて戻ってきた光の波が直交点でぴったり重なるよう調整します。ところが、重力波によって空間に歪みが発生すると、左右の鏡と直交点との距離がほんのわずかながら変わり、波にズレが発生します。それを検出するのが現代主流のレーザー干渉計型重力波観測装置の基本原理です。

干渉計の鏡は振り子に吊られていて常にμm程度揺れています。装置が重力波を観測できる状態を保つには、この揺れを制御する必要があります。理学部ではその手法の研究に取り組み、博士論文としてまとめました。この手法の価値を認めていただき、LIGOにも採用されました。

自身が製作した装置を点検する新井上席研究員(左)と同僚のエンジニア(右)。©LIGO Lab / Corey Gray

――海外に挑戦されたきっかけはなんでしょうか。

私は2009年からカリフォルニア工科大学(Caltech)のLIGO研究所に所属しています。LIGOは、Caltechとマサチューセッツ工科大学(MIT)が中心となって進める国際共同実験で、共著者に1,000人もの研究者が名を連ねる大きなプロジェクトです。

それ以前は、大学院に進学した1995年から、国立天文台の観測実験「TAMA300」に携わっていました。1999年に装置が稼働し、世界最高感度の性能を誇った時期もあります。国立天文台に10年在籍した区切りに、新たな挑戦としてLIGOの最新鋭の装置で研究したいと思い渡米しました。このときにLIGOや他のプロジェクトが、理学部での研究やTAMA300の開発で培ったこと全般を高く評価してくれていることがよくわかりました。そういった技術の蓄積は、現在日本で進んでいるKAGRA干渉計の計画にも引き継がれていると思います。

――学生さんへのメッセージを。

大勢の人が力を合わせ、ひとりでは到底及びもつかない大きな目標を達成する。それがビッグサイエンスの醍醐味です。また、多くの人との共同作業を通じ、社会で広く求められる能力を養うこともできます。論理的に実験計画を組み立て、人との対話・協力を通じて実行に移し、結果を検証して次に活かす。こうした力は研究以外の世界でも活かせるはずです。物理学に限らず、理学にはチームで推進するさまざまな研究があります。ぜひ理学部で、チームで成し遂げる喜びを味わってみてください。

※2017年理学部パンフレット(2016年取材時)
文/萱原正嗣、写真/貝塚純一

カリフォルニア工科大学(Caltech)LIGO研究所 上席研究員
Koji Arai
新井 宏二
1995年東京大学理学部物理学科卒業、97年同大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、2002年同博士号取得(論文博士)、国立天文台で助手・研究員・助教などを務めた後、2009年よりCaltechのLIGO研究所に所属。2016年より現職。
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