日本の文部科学省の国費留学生として、理学部数学科で学んでいます。演習の授業ではみんなが積極的に発表するので、それを聞いたり質問したりするのを楽しんでいます。学部3年生でも、4年生の授業を聴講できるのも魅力的です。
3年生の夏には、GEfIL(Global Education for Innovation and Leadership) 海外プログラムの一環として、University College Londonで2ヶ月間の短期留学を行いました。あらかじめ内容が決まっている留学プログラムもありますが、私は自分で先生にメールを書いて留学受け入れのお願いをして、受け入れてもらうことができました。
数学は中学生のころに好きになりました。もともとはITや物理が好きでしたが、それらを学ぶためには数学が必要だと知ったのがきっかけです。数学は、考えるだけでいろいろなことを発見できるのが面白いと思います。定理などの証明方法を自分で考え、それが合っているかを本と比べてみるのも楽しいですし、数学の問題について先生や同級生と議論するのも好きです。
中学生の時にモロッコで空手をやっていたこともあって、日本や日本の文化に興味を持ちました。また、数学の難問である「ABC予想」を解いた望月新一教授(京都大学)の存在や、3人の日本人物理学者が2014年にノーベル物理学賞を受賞したニュースで、日本の研究水準が高いことも知っていました。モロッコで、フランスをはじめヨーロッパに留学する学生が多いのですが、私は他の人と違う経験をしたいと考えました。文部科学省の国費留学生試験に合格し、経済的な援助を受けられたのも、日本に留学する大きな決め手になりました。
国費留学生のプログラムは、来日後の1年間、予備教育のカリキュラムがあります。私は東京外国語大学留学生日本語教育センターで日本語を学びました。センターの日本語教育は素晴らしく、私も漢字をマスターし、日本語でのスピーチや議論もできるようになりました。
東京大学では、1・2年生の時に、自分の専門分野だけでなく、自然科学や人文・社会科学のさまざまな分野についても学べます。もともと好きだった物理学のほか、国際関係論の授業でアフリカ大陸の歴史などについても勉強しました。
数学科に進んでからも、研究・教育水準は想像した以上に高く、先生たちは優れた研究をしていて、授業も非常に高度です。数学科の学生もみな優秀なうえにとても勉強熱心で、大きな刺激になっています。
東京は生活が便利なので、生活するのに何の不自由もありません。プログラミングのアルバイトをしていたこともあります。大学でもオフタイムでも、充実した学生生活を送っています。
将来は数学の研究者を目指しています。数学の分野で興味があるのは、解析と幾何です。それらを組み合わせた非可換幾何という分野の研究に興味があります。非可換幾何は、物理現象にも関係する分野です。私の研究成果をほかの人が応用して実社会の役に立ててほしい。実社会に役立つ数学の研究者になるのが目標です。
※2020年理学部パンフレット(2019年取材時)
文/萱原正嗣、写真/貝塚純一