Science GalleryThe University of Tokyo

研究展示

連続フロー合成が拓く化学品製造のイノベーション

chem001-1

化学品の製造:バッチ反応法と流通反応法

chem001-2

医薬品ロリプラムの連結・連続フロー合成

自動車や器械などの工業製品の多くは、流れ作業のような「フロー方式」で生産されています。では化学製品はどうでしょうか。化学製品は社会に広く普及していますが、医薬品、農薬、機能性化学品のようなファインケミカルは、「バッチ方式(=フラスコ反応の応用)」で製造されています。この方式は、多様な化合物の合成に用いることができますが、余分なエネルギーや労力を要し、廃棄物が多量に排出されます。一方、フロー方式は、原料を反応器の一端から連続的に投入し、生成物をもう一方の端から連続的に得る方法で、エネルギー生産性や安全性に優れ、廃棄物も少なく抑えることができる理想的な方式です。しかしこれまでフロー方式は、医薬品のような複雑な構造の化学品の合成には用いることができないと考えられてきました。これに対し東京大学理学部化学科小林修研究室では、反応系に溶けないまま機能する不均一系触媒を活用することで、原料から製品までの一連の工程を、切れ目のないフロー方式で実現できることを実証しました。展示しているものはその装置のミニチュアです。従来の製造設備(化学工場)を大幅にコンパクト化できる可能性があります。これにより、医薬品などのファインケミカルが、消費者に近い位置で、オンデマンド生産することができるようになります。

文責

小林 修(化学科・教授)、2022年