Science GalleryThe University of Tokyo

研究展示

シグナル伝達を司る膜タンパク質の4Dプリント模型

図1 ミラベグロンによって活性化されたβ3受容体とGタンパク質の複合体構造

図2 Kv4-DPP-KChIP超分子複合体の構造

ヒトを含む多細胞生物は細胞膜を超えた情報のやりとりが必須であり、細胞膜に存在する膜タンパク質がそれをつかさどっています。東京大学理学部生物化学科の濡木理研究室では、クライオ電子顕微鏡法によって膜タンパク質の三次元構造を決定し、シグナル伝達機構を原子レベルで解明することを目指しています。

β3アドレナリン受容体はGタンパク質共役受容体であり、細胞外からのリガンドを受け取ることで、細胞内のGタンパク質を活性化しシグナルを伝達しています。β3受容体は交感神経を刺激することで、脂肪燃焼や膀胱弛緩を担っています。わたしたちは、過活動膀胱治療薬ミラベグロンが結合したβ3受容体の構造を決定し、受容体を活性化するしくみを解明しました(図1、Nagiri et al., Molecular Cell, 2021)。構造情報を元に薬効が向上したβ3受容体刺激薬の開発が期待できます。

電位依存性カリウムチャネルKv4は、神経細胞の発火パターン制御や記憶・学習に関わっています。Kv4-DPP-KChIP超分子複合体の構造から、補因子DPPとKChIPによってゲート開閉の制御機構が明らかになりました(図2, Kise et al., Nature, 2021)。Kv4が関与する、神経疾患に対する薬剤設計に貢献できると考えています。

文責

濡木 理(生物化学科・教授)、2022年