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学生たちの声

夢は大きく、銀河の彼方を目指す

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天文学専攻 博士課程2年

ヌオ・チェン

陳 諾

From

上海交通大学

中国、上海

中国に生まれ育ち、日本文化に魅力されて東京大学へと進学したヌオ・チェン氏。遥かな銀河を研究する彼は、宇宙について何を明かすのだろう?

上海から東京へ

両親が上海の日系企業に勤めていたこともあって、日本の文化やアニメに触れる機会が多く、それが日本への留学のきっかけになったと思います。東京大学の大学院を受験すると決めてからは、1年間日本語を学びました。子供の頃に初めて見た日本のアニメは「ガンダムSEED」で、アニメをみることで日本語の勉強にも役立ったのかなとも思います。

留学してから、修士、博士課程の4年間を東京で過ごしています。生活の費用は上海と同じようにかかりますが、東京ははるかに静かで清潔です。日本人のマナーも良く(一度財布をなくしてしまい、誰かが拾って警察に届けてくれました)、上海に住む家族とも近いため、ここでの生活が気に入っています。

宇宙への興味の芽生え

子供の頃 、宇宙飛行士になりたいと思っていました。星や月を見て、なんとか到達することはできないだろうかと考えることを楽しんでいました。そうしているうちに、2007年、私はARISSスクールコンタクトに参加し、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士とアマチュア無線で連絡を取り、宇宙ステーションでの生活について尋ねる機会を得ました。その2年後にあった皆既日食イベントは、 上海の悪天候のせいで見ることができませんでしたが、その埋め合わせに、2017年アメリカの皆既日食イベントを見るためにイエローストーン国立公園に行ってきました。私は皆既日食のようすを撮影し、その写真を中国の雑誌に送りました。あの時は、とても興奮しましたね。こうした経験によって、宇宙と天文学への興味をさらに刺激され、学部生時代には大学の天文クラブを率いて、 趣味として天体写真を続けたりしました。

日食の合成画像 ©陳 諾

旅行中はアマチュア天体望遠鏡を持ち運ぶことができないので、デジタルカメラと小さな三脚を持って夜空を撮影しています。最近では、プロジェクトでオーストラリアのサイディング・スプリング天文台を訪れ、写真を撮ることができました。夜遅く、茂みの中で物音がして確認してみたところ、そこにはカンガルーがいました(笑)。

サイディング・スプリング天文台望遠鏡近くのカンガルー ©陳 諾

海外での研究

理学系研究科・理学部が進めているGraduate Research Abroad in Science Program (GRASP※1) のおかげで、オーストラリアのシドニーにあるマッコーリー大学を訪問することができました 。私はそこで、人生初の研究論文の起草とデータ分析に集中しました。オーストラリアでの研究環境は大変興味深いものでした。たとえば、金曜日の午後はキャンパス内のバーに行き、科学や人生について語り合ったりしました。日本人は少し恥ずかしがり屋なので、そうした話をすることはめったにありませんでしたが、オーストラリアでは、さまざまな研究分野や文化の異なる人と話をしました。

銀河の彼方を目指す研究

僕は修士課程から、すばる望遠鏡やマゼラン望遠鏡を使って、赤外線で遠方銀河(数十億光年離れた銀河)を研究してきました。宇宙膨張による赤方偏移で、銀河から出た可視光は赤外線で観測されます。得られたデータは測光データと呼ばれ、天体のスペクトル情報(指紋のようなもの)を含んでいます。銀河の性質を知るために、私は測光データを既知の星種族のスペクトル情報に組み合わせて再現するコードを書いています。これは「SED Fitting」と呼ばれ、画像だけではわからない銀河に関する貴重な情報を得ることができます。

これらの遠方銀河のスペクトルの特徴の一つは、電離した水素原子が発するHα輝線です。これは星形成率の指標として使われ、強いHα輝線を持つ銀河は基本的には新しく形成された銀河だと思われます。また、これらのHα輝線銀河に2階電離した酸素原子が放出する[O III]輝線と呼ばれる別の注目すべき輝線も発見しました。[O III]輝線の強い銀河は、緑色に見えることからグリーンピース銀河と呼ばれ、近傍宇宙では星形成率が非常に高い銀河でもあります。修士の研究では遠方のグリーンピース銀河の性質を詳しく調べました。

今は、2021年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)から得られるデータに取り組んでいます。JWSTは地上の望遠鏡とは異なり宇宙空間にあるため、地球の大気がデータに影響を与えません。JWSTの1時間の露光時間の効率は、地上の望遠鏡の12時間の露光時間をはるかに上回り、地上のどの望遠鏡よりも優れた5倍以上高解像度のデータを得ることができます。この2つの要素によって、遠くの宇宙の最も微かな銀河をも見つけ、その形などの物理的性質についてより詳しく知ることができるのです。それは、この高性能な望遠鏡を通して見えてきた、まったく新しい世界です。

JWSTで見た遠方の銀河 ©NASA

JWSTのデータから、銀河と銀河間物質の進化が理解できます。現在の銀河と比べると、ビッグバンから10億年後に存在している銀河は、星形成率や金属性などの性質が異なります。宇宙の進化を理解する上でも非常に興味深い観測対象です。

科学目標の重要性

東京大学の博士課程での研究を通じて、科学目標を明確にすることが何よりも大切だと学びました。プログラミングのスキルの有無は問題ではありません。たとえば、コーディングにエラーが発生した場合、いつでもChatGPTに修正してもらうことができます。しかし、私たち研究者は、研究分野で未知のものを見つけなければなりません。

望遠鏡で見る未来

卒業後は、ポスドクとして日本で研究を続けたいと思っています。その後はヨーロッパかオーストラリアかアメリカでポスドクをしたいと思っています。ゆくゆくは、大学または天文台で、研究職に就きたいと思っています。

GRASP※1 https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/offices/ilo/grasp/application.html

※2023年取材時
英文/ラヴィンドラ・パラバリ・ネッティミ
翻訳/ベルタ・エメシェ
写真/貝塚純一
文章は簡潔にするために編集されています。

天文学専攻 博士課程2年
Nuo Chen
陳 諾
中国・上海出身。上海交通大学で学士号を取得後、2020年に東京大学大学院理学系研究科に入学。2022年に理学系研究科博士課程に進学。趣味はサッカー、サイクリング、アニメ鑑賞。
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