研究展示
宇宙の果てを観測した穴あきアルミ板
ジム・ガン博士と日本の共同研究者(2019年11月13日)
アパッチポイント天文台にあるスローンデジタルスカイサーベイ標識
640本の光ファイバーがつながれた穴あきアルミ板
- 使用時期:
- 2000年~2009年
- 使用場所:
- 米国ニューメキシコ州アパッチポイント天文台
スローンデジタルスカイサーベイ望遠鏡
スローンデジタルスカイサーベイ (SDSS: Sloan Digital Sky Survey)は、2000年から本格的に始動した3次元デジタル宇宙地図を作成する宇宙の国際共同プロジェクトです。これはプリンストン大学のジム・ガン博士によって提案され、日米共同プロジェクトとして発足しました。当時の日本側メンバーは11名でしたが、やがて本格的な国際共同研究となり、2009年の第二期観測終了時の日本側メンバーは14名、うち7名が本理学系研究科の教員でした。
SDSSは、まず視野3度の広い領域を撮像し、その中から約600個の明るい天体を選び出します。次に、その視野を覆う直径80cm、厚さ3mmのアルミ円盤上に、天体の位置に合わせた穴を開け、そこから光ファイバーを1本ずつ手で取り付けた後、分光を行います。これ2500以上の異なる視野に対して繰り返して、全天の約4分の1の3次元地図を完成させました。このアルミ板は実際に使われたその一枚です。
SDSSは2009年までに、2.3億個の天体を撮像し、そのうち銀河93万個、クェーサー12万個、恒星46万個という膨大な数の天体のスペクトルを得ました。それらは我々の宇宙の理解を格段に進歩させ、世界観に革命をもたらしました。ガン博士は、この業績に対して2019年、第35回京都賞を受賞されています。
- 参考資料:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Sloan_Digital_Sky_Survey
- https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/40/pdf/20080920_40_3.pdf
- https://www.kyotoprize.org/laureates/james_gunn/
- https://www.kyotoprize.org/en/laureates/james_gunn/
- 嶋作一大『銀河進化の謎』(東京大学出版会,2008)
- 須藤靖『ものの大きさ 自然の階層・宇宙の階層』(東京大学出版会,2021)
文責
須藤 靖 (物理学科/ビッグバン宇宙国際研究センター・教授)、2022年