ノーベル物理学賞を解説する特別講演会

広報誌編集委員会

2011年のノーベル物理学賞は,「遠方の超新星の観測により宇宙の加速膨張を発見した」業績により,カリフォルニア大学のソール・パールムッター (Saul Perlmutter),オーストラリア国立大学のブライアン・シュミット(Brian Schmidt),およびジョンズ・ホプキンス大学のアダム・リース(Adam Riess) の3氏に授与された。パールムッター博士は「超新星宇宙論プロジェクト」,他の2名は「高赤方偏移超新星探査チーム」という独立なチームを率い,宇宙の遠方で発生するIa型超新星を探査した結果,1998年にほぼ同時に,きわめて重要な結果を導いた。Ia型超新星は絶対光度を推定できるため,そこまでの距離と発生時刻を求めることができる。また赤方偏移から当時の宇宙のスケールも求められるため,多数の超新星を観測することにより宇宙のスケールの時間変化,すなわち宇宙の膨張史が再現できるのである。宇宙がもし万有引力(重力)を及ぼしあう通常の物質で支配されているなら,宇宙膨張は減速するしかないが,彼らは精力的な観測の結果,宇宙膨張がなんと加速していることを発見したのである。この驚くべき結果を一般相対論に基づき解釈すると,加速の原因である未知の暗黒エネルギーが宇宙の全エネルギー密度の3/4を占めることが結論され, 21世紀の新しい宇宙像の基礎の1つとなった。

この業績は本研究科では,天文学専攻,物理学専攻,ビッグバン宇宙国際研究センター,および天文学教育研究センターにおける研究テーマと,深い関係をもつ。そこで本研究科ではこれら2専攻および2センターと共催で,受賞発表の1週間後に当たる2011年10月11日の夕方に小柴ホールにて,「2011年ノーベル物理学賞の意味~遠方超新星の観測が明かした宇宙の加速膨張と暗黒エネルギー~」と題する特別講演会を開催した。講演会は,横山順一教授(ビッグバンセンター)の司会のもと,須藤靖教授(物理学専攻)より,パールムッター博士もメンバーの1人として,ビッグバン宇宙国際研究センターを拠点に遂行している「暗黒エネルギー研究国際ネットワーク(DENET)」の紹介があり,続いて同博士の緊密な研究協力者である土居守教授(天文センター)より,約1時間のメイン講演が行なわれた。その中では,今回の受賞研究の歴史的な背景,手法と意義,残された謎などについての解説に加え,受賞した2チームのリーダーと日本,とくにすばる望遠鏡との関係などが紹介された。聴衆は,本研究科の学生,院生,職員を中心に, 120名ほどに達し,盛況であった。