理学系研究科の電力危機対策

副研究科長 西原 寛(化学専攻 教授)

9月に入って酷暑の峠を過ぎ,電力供給問題も冬までもち越しとのニュースが流れている。 東日本大震災直後に行われた東京電力の計画停電は,われわれに電力の貴重さを実感させた。 政府は夏の節電対策として,管内の契約電力 500 kW 以上の大型事業所に対し,7月1日から電力使用制限令を発動した。 東京大学は東京電力の供給量の 0.1% にあたる 6万 kW を使用してきた大口消費者であり,大学本部は3月中には電力危機対策チーム,研究継続対策WGを立ち上げ,夏期,冬期の電力危機を乗り切る対策を進めてきた。 当初,政府の電力使用制限は昨年に比較して 25% 削減が有力だったが,最終的には 15% 削減に落ち着いた。 本学は,社会への影響を考慮して当初から 30% の削減を掲げ,そのまま維持した。シミュレーションで 30% 削減が不可能ではないという判断からである。 その根拠は3年前に二酸化炭素排出量削減のため設置された東大サステイナブルキャンパスプロジェクト(Todai Sustainable Campus Project, TSCP)室のデータなどであり,工学部2号館をモデルに電力有効利用を研究してきた本学の専門家の寄与も大きい。 具体的な設定目標は,「目標1:ピーク時電力の削減目標―7月(年間最大月)まではその月の対前年度比の 30% を削減,8月以降は対前年7月比の 30% 削減値以下に抑制。目標2:使用電力量を対前年度比の 25% を削減。」である。 年間使用電力量は,上述したTSCP室を中心に本学が第一フェーズの目標としている「2006年度に比べ2012年度には非実験系の二酸化炭素排出量の 15% 削減(大学全体の二酸化炭素排出量に対する削減率 13%)」と関連している。

全学での節電対策

電力消費量 30% 削減に向けて,本部は「研究を止めない」ことを前提に3段階の対策を提示した。 Step 1 は非実験系の日常の節電であり,おもな施策は空調,照明,電算サーバの使用の最少化であり,冷蔵庫,エレベータなどの使用の間引きなども含まれる。 Step 2 は平日業務の休日シフト,Step 3 は空調の全面停止である。 それに加えて,強く推進したのが電力使用量のリアルタイム測定オンライン見える化である。 構成員が常時,電力量を監視しながら活動することで,かなりの削減ができるとの見込みである。 この見える化は,6月終わりから,大学のウェブページに1時間ごとの消費量がアップされるという形で実現した(http://ep-monitor.adm.u-tokyo.ac.jp/campus/denryokuを参照)。

理学系での節電の実施方針・対策

理学系では,電力危機が迫る4月に各専攻,センターごとの節電対策を立てることを要請した。 本部のピーク時電力の 30% 削減目標は厳し過ぎるとの意見も多かったが,5月の教授会の前に磯部TSCP室長に上記の全学の節電およびTSCP活動の解説をしていただき,理解を深めた。実際にこれまでかなりの自主努力が行われてきた。 具体的は,空調の使用削減(温度設定調整の徹底),電算機使用量の削減,エレベータ使用台数の削減,照明の最少化,冷凍・冷蔵庫の必要最小限利用,電算サーバの集約化,仮想化,こまめな電源のオンオフ,自主的な土日,休日への実験研究のシフトなどである。 たとえば理学部1号館の素粒子物理国際研究センターでは大型電算機を4割程度カットで運用している。 7月,8月の真夏日には削減割合が目標値に届かなかったりもしたが,総合的には各号館とも本部の目標値をほぼ達成しており,努力の成果が表れている。 非実験系の節電は研究にさほど大きな支障を与えていないが,研究用機器の大幅な節電を行っているところは,非常事態が継続中である。 いかにこの状態を脱して正常な研究環境に復帰できるか,今後の対策を練る必要がある。

非常用電源の設置

3月の計画停電以降,停電は起こってはいないが,今回の電力危機はいつ突発的な停電が起こっても不思議ではないことを示した。 そのような非常事態に備えるため理学系では非常用電源の設置を進めている。 きっかけは,3月に計画停電が実施されたさいに,生物科学,生物化学専攻から要望された貴重な生物試料用の非常用電源の設置要望である。 その後,非常用電源WGを設置して検討して,2号館,3号館に 100 KVA のディーゼル発電機を設置することを研究科で決め,具体的な設置プロセスに入っている。 3号館では,建物の外側に発電機を設置するため,全学キャンパス計画委員会に諮り,景観を損なわない措置を施す予定である。

夏期の山場は越えたが,暖房が必要となる冬期に向けての対策は抜かりないように準備する必要がある。 理学系教職員,学生の皆様に,引き続きのご協力を願いたい。