大学院生出張授業プロジェクトBAPが,2010年度小柴昌俊科学教育賞奨励賞を受賞

横山 広美(広報・科学コミュニケーション 准教授)

図1

左から初代代表・物理学専攻博士課程・音野瑛俊氏,2010年度代表・物理学専攻博士課程・宮武広直氏,2011年度代表・地球惑星科学専攻博士課程・白川慶介氏

理学系の学生が中心になって始まった大学院生出張授業プロジェクトBAP(バップ)が,2010年度の小柴昌俊科学教育賞奨励賞を受賞した。 本プロジェクトは,情熱をもって研究に取り組み,研究の現場を知ってほしいと強く願う大学院生が2008年に発足させたグループで,現在までに53件の高校への出張授業を行い延べ2000人以上の生徒が彼らの話を聴講している。 2009年からは理学系にとどまらず東京大学全学の活動として人文系を含めた多くの大学院生を高校に送りだしている。 BAPとは英語で「母校に帰ろう(Back to Alma mater Project)」の略である。後輩たちが先輩の姿を見て研究の魅力を知る,進路の参考にすることを主眼におき,BAPは大学院生の母校を中心に実施してきた。

BAPの実績は,大きく分けると二つある。 ひとつは大学院生による出張授業の枠組みを確立させたこと。 出張授業を希望する学生を集め,母校とのやりとりをサポートし,多くの異なる分野を専門にする仲間が集まり高校生になったつもりで講演者の話を聞く「練習会」を徹底的に行い質の高い出張授業を行う。 さらに反省会を行って反省点を集約しグループとしての経験を蓄積している。

もうひとつは,こうした大学院生による出張授業の枠組みをひとつのパッケージにし,他大学の学生たちにも提供する「エキスポート」を成功させていることだ。 すでに東北大のグループ,そしてマレーシアの留学生がBAPからの支援を受けて母校での出張授業を成功させている。

発足して間もないにもかかわらずこうしたシステムを確立したことが高く評価された。 今後の彼らの継続的な活躍を期待したい。