国立天文台家正則教授が東レ科学技術賞を受賞

家正則教授
国立天文台の家正則教授(天文学専攻兼任)が,「初期宇宙史の観測的研究とレーザーガイド星補償光学装置の開発」で東レ科学技術賞を受賞されました。おめでとうございます。
家先生は,すばる望遠鏡の主焦点カメラを用いて,宇宙最遠方の銀河を発見されました。 この銀河の出す光は,今から129億年前に放射されたもので,宇宙の涯(ビッグバン)までの距離の94%を見通したことになります。 この発見によって,今から129億年前には,宇宙の「再電離」がまだ完全には終わっていないことが分かりました。 これが「初期宇宙史の観測的研究」です。
補償光学とは,大気の乱流のために生じる星像のボケ(シーイング)をリアルタイムで(0.001秒ごとに)補正し,望遠鏡の主鏡直径で決まる(回折限界)像を得る技術です。 この方法は,「星の像は小さいはず」という原理に基づいて動作するので,撮影しようとする天体それ自身か,あるいはそのすぐ近く(30秒角以内)に,明るい参照星が必要になります。 これでは,せっかくの技術も,適用できる天体が限られてしまいます。 そこで,明るい星がない場合でも,地上からオレンジ色のレーザー光を打ち上げて,約90 km 上空にあるナトリウム原子を励起して人工の星を作り,その星を使って補償光学装置を働かせることにしたものが,「レーザーガイド星補償光学」(理学部ニュース2010年11月号「理学の匠第4回」参照)です。 この研究は,家先生をはじめ,本研究科学位取得者5名を含むチームの,10年来の努力の賜です。