山下恭弘准教授の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞を祝して

– 業績:「革新的有機合成を実現するスーパー触媒開発の研究」 –

小林 修(化学専攻 教授)

図1

山下恭弘准教授

医薬品などの複雑な分子を効率的に合成する上で,高い立体選択性をもった分子骨格構築反応は必要不可欠です。 ここでは反応を促進する「触媒」がきわめて重要ですが,既存の触媒には現代科学の観点からすると多くの問題があり,新たな触媒の開発が強く望まれています。 山下准教授はこの問題に取り組み,まず,これまで有機合成化学の分野ではほとんど未開拓であったジルコニウムやニオブを用いる新しい不斉ルイス酸触媒の開発,および酸素を用いる金属ルイス酸触媒の新規活性化法の開発を行いました。 また,有害な金属を含まない一酸化窒素(NO)カチオンや,地球上に豊富に存在するアルカリ土類金属を触媒とする新規環境調和型反応の開発も行っています。 さらに,不斉銀アミド触媒やアミノアルカンの直接的付加反応の開発を通して,既存の手法では困難であった分子骨格構築反応を実現しました。 これらの一連の研究は,学術的にも新しい独自のコンセプトを提供するものであり,同氏の開発してきた触媒は世界をリードするものとなっています。 有機合成化学を通じて,人類と環境の調和を図る山下准教授の研究は,今後ますますの発展が期待されます。