数理科学研究科の儀我美一教授が紫綬褒章を受章

藤田 宏(理学部名誉教授)

図1

儀我美一教授

紫綬褒章は,学術・芸術・スポーツで著しい業績を上げた人に贈られる褒賞です。 儀我美一(ぎが・よしかず)教授が,ナビエ・ストークス方程式に関する優れた業績(博士論文)により非線形偏微分方程式の研究にデビューしたのは1980年代の半ばですが,以来,儀我教授は最近の四半世紀における斯界の進歩を特徴付ける,世界的な成果をいくつも挙げて来られました。 それらは,21世紀の解析学の未来を拓く役割を果たすと共に,科学技術の先端において広く応用されています。

現象と関わる解析学の推進は,「対象(問題意識)」,「概念(考察の枠組み)」,「方法(解明・解決の手段)」の三つの視点から視ることができます。 儀我教授の研究スタイルの特長は,この三視点のすべてにおいて顕著な独創性と展開力です。その多くに言及することはできませんが,典型例を挙げれば,(結晶表面のような)界面の運動を記述する曲率流方程式の研究です。 微分幾何学や材料科学・画像処理にも影響を及ぼしたこの研究では,界面の‘ちぎれ’などの特異性に耐える「広義解の概念」の設定,および,曲面をある関数の等高線(面)とみなす「等高面の方法」の導入が画期的です。 ちなみに,非線形放物型方程式の解の‘爆発’の研究も,日本発祥の分野(H. Fujita, 1966)ですが,近年の進歩の土台は「解の自己相似性」の意義を見抜いた儀我教授の方法(変換)にあります。