物理学専攻 田中靖郎名誉教授が文化功労者に

田中靖郎名誉教授
本研究科(物理学専攻)名誉教授および宇宙科学研究所名誉教授の田中靖郎(たなか・やすお)先生が, 2010年度の文化功労者に選ばれました。 田中先生は1953年に大阪大学理学部物理学科をご卒業の後,本学原子核研究所助手,名古屋大学理学部助教授を経て, 1972年に本学宇宙航空研究所(のち改組により宇宙科学研究所)教授に着任されました。 本研究科では,学際理学客員講座の教授として,長らく大学院教育に尽力されました。 1994年に宇宙科学研究所をご退官の後は,マックス=プランク研究所の客員科学者としてドイツに滞在され, 2008年まで日本学術振興会ボン研究連絡センター長も務められました。
田中先生は宇宙線のご研究を出発点に,物理実験家としての卓抜な手腕を発揮され,1960年代から勃興したX線天文学の先頭に立ち,オランダとも協力した超軟X線放射の先駆的観測,ガス蛍光比例計数管の開発,それを搭載した「てんま」衛星による鉄輝線分光学の開拓,「ぎんが」による超新星SN1987Aの検出,「あすか」によるブラックホールからの相対論的効果の検証など,広く深い宇宙物理学を展開され,日本の当該研究分野を大樹へと育て上げられました。 さらに広い国際的視野に立って国際協力を推進され,プロジェクトマネジャーとして多くの科学衛星を成功に導かれるなど,そのご功績はひじょうに多岐にわたります。
先生は現在でも最新の衛星データの解析に取り組んでおられ,研究に対峙されるお姿は後進にとって,つねに大きな励みと刺激になっています。 先生はこれまで,仁科記念賞,日本学士院賞,米国ロッシ賞,英国王立協会マッセイ賞などを受賞され,昨年は日独学術交流へのご貢献により,外務大臣表彰を受賞しておられます。 さらにこのたび,文化功労者として叙せられたことは,誠に先生のご業績にふさわしく,心からお祝い申し上げます。