2010年度「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を本研究科の博士課程2名が受賞

広報誌編集委員会

「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」は,将来を担う日本の若手女性研究者が国内の教育・研究機関において研究を継続できるよう,化粧品メーカーの日本ロレアル社と日本ユネスコの協力のもとに2005年に創設されたもので,物質科学と生命科学の分野から毎年4名,40歳以下の女性科学者に贈られる。 今年は,本研究科から化学専攻の中村優希さんと生物化学の野澤佳世さんが受賞の栄誉に輝いた。 本研究科からの受賞は,今回が初めて。 なお,この賞は本研究科の小林昭子名誉教授が2009年度に受賞された国際賞の「ロレアル−ユネスコ女性科学者賞」(理学部ニュース2009年1月号参照)の国内・若手版にあたる。

中村優希さんの受賞を祝して

中村 栄一(化学専攻 教授)

図1

中村優希さん

2010年度「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞−物質科学分野」を,化学専攻博士課程の中村優希さんが受賞されました。

受賞研究テーマは「炭素−フッ素結合の活性化による新規合成反応の開発とナノサイエンスへの応用」です。 フッ素原子は電子を引き寄せる作用があり,そのためにフッ素を含んだ有機化合物は,医薬や有機エレクトロニクス材料として注目を集めています。 中村さんは,化学反応の根本原理に基づいた触媒反応を設計して,新しいフッ素化合物を作り出すことに成功しました。

中村さんはアメリカで育ち,カリフォルニア大学バークレー校を卒業して本研究科に入学しました。 毎日研究に打ち込む傍ら,アメリカの高校・大学の学生生活に関する書き物を雑誌に寄稿したり,本学理学部の「女子高校生のためのサイエンスカフェ」や,この夏行われた「化学オリンピック」のホスト学生を務めるなど,科学の面白さを人々に伝える活動も活発に行っています。 2009年理学系研究科研究奨励賞(修士)受賞者です。

野澤佳世さんの受賞を祝して

濡木 理(生物化学専攻 教授)

図2

野澤佳世さん

優れた成果を挙げた若手女性研究者に贈られる「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」の今年の受賞者に生物化学専攻の野澤佳世さんら4名が選ばれました。 この賞は世界の科学の発展に貢献した女性科学者を称える「ロレアル−ユネスコ女性科学賞」の国内賞にあたる非常に名誉ある賞であり,DNAの不連続複製「岡崎フラグメント」で知られる岡崎恒子氏やリボソームのX線結晶構造解析でノーベル化学賞を受賞したアダ・ヨナス (Ada E. Yonath) 氏らが科学賞を受賞しています。

受賞者である野澤さんは,生命の設計図,DNAからタンパク質が作られるという営みの中でタンパク質にいろいろな新しいアミノ酸を組み込むことのできる特別な二つの分子(PylRSとtRNA)の複合体構造と機能を解明し,医療・工業に有用な新規タンパク質合成技術開発に貢献しました。 野澤さんはこの成果を多くの国内外の学会で発表すると共に,論文,総説としてもまとめるなど(Nature 2009,生化学ミニレビュー),精力的に研究活動を行っており,これからのさらなる飛躍と活躍が期待されます。