米澤明憲教授,紫綬褒章を受章

米澤明憲教授
情報科学科,情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻,情報基盤センター長の米澤明憲教授が,情報科学分野における長年にわたるソフトウェアシステムの基礎理論の研究と実践の功績が認められ,紫綬褒章を受章されました。
先生の受章における世界的功績として,「並列オブジェクト」に基づく計算モデルとプログラミング言語の提唱があります。現在使われているコンピュータシステムのソフトウェアの大部分は,「オブジェクト指向」とよばれる設計・開発手法が用いられています。これは,ある形式に従った「オブジェクト」とよばれるソフトウェア部品(モジュール)を多数組み合わせて,ソフトウェアを見通し良くかつ安全に構築する方式です。
1970年代半ば,まだ,「オブジェクト指向」という概念が定着する以前に,米澤先生は,「オブジェクト」の概念を一般化し,「オブジェクト」のひとつひとつに,小さなコンピュータを1個ずつ埋め込んだ「並列オブジェクト」という概念を提唱されました。そして,(1)「並列オブジェクト」に基づくプログラミング言語,(2)「並列オブジェクト」の高次・動的拡張方式,(3)「並列オブジェクト」の数学的モデル,(4)「並列オブジェクト」に基づいて構築されたソフトウェアシステムの超並列コンピュータでの高効率な実行方式,などを次々に研究開発し,国際的にたいへん顕著な学術的かつ実用的な業績を上げられました。
現在では,並列オブジェクト指向技術は,インターネットにおけるセカンドライフやTwitterシステム,また,スーパーコンピュータを用いた科学技術計算分野では,生物理学用分子動力学シミュレータの実現などにも使われています。今回の受章は,長年にわたる先生の並列オブジェクト指向技術に対する理論から実践に至る優れた業績と科学技術に対する多大な貢献が高く評価されたものです。ご受章心よりお祝い申し上げますとともに,ますますのご活躍を祈念します。