文化功労者として顕彰 物理学専攻山崎敏光名誉教授

早野 龍五(物理学専攻 教授)

図1

山崎敏光名誉教授

山崎敏光名誉教授が平成21年度文化功労者に選ばれました。山崎先生は1957年に本学理学部物理学科を卒業なされ,本学原子核研究所助手,カリフォルニア大学およびニールス・ボーア研究所研究員,本学理学部講師,助教授,教授を経て,1986年より本学原子核研究所所長を務められました。退官後は日本学術振興会監事などを歴任され,現在は財団法人仁科記念財団理事長および日本学士院会員として活躍されるとともに,自ら科研費を獲得され,研究に励んでおられます。

山崎先生は中間子などの粒子ビームを原子核物理のみならず原子分子・物性科学に至る広い分野の研究に応用して新しい学問分野を拓かれました。

とくに原子核の磁気能率の高精度測定による核内でのπ中間子交換流の発見,ミューオンスピン回転緩和共鳴法の開拓,反粒子を含む原子分子の研究,π中間子原子を用いた核子の質量獲得メカニズムの研究などは,きわめて独創的なものです。

山崎先生はこれらの研究の多くをカナダ,ドイツ,スイスなどの加速器施設で行い,学術の国際交流に貢献されました。いっぽう,国内においては,1970年代後半に高エネルギー物理学研究所内に世界初のパルス状ミューオンビーム施設を建設し,また,東京大学原子核研究所所長として大強度陽子加速器施設(現在のJ-PARC)実現の礎を築くなど,わが国の原子核物理学研究に主導的役割を果たされました。

山崎先生は松永賞,仁科記念賞,藤原賞,日本学士院賞恩賜賞を受賞しておられますが,このたび文化功労者に列せられたことは,先生の業績を顕彰するのに相応しいものとして,心からお喜び申し上げます。