平野哲文講師が第24回西宮湯川記念賞受賞

平野哲文講師
本研究科物理学専攻の平野哲文講師が「相対論的流体力学に基づくクォーク・グルーオン・プラズマの研究」で第24回西宮湯川記念賞を受賞されました。この賞は,湯川秀樹博士が,「中間子論」を西宮市苦楽園在住中に提唱したことを記念して1986年に創設されたもので,顕著な業績をあげた40歳未満の若手研究者に与えられます。陽子・中性子・中間子(ハドロンと総称される)はクォークやグルーオンなどの素粒子からできていますが,誕生したばかりの1兆度を超す超高温の初期宇宙では,ハドロンが溶解し,クォークとグルーオンからなるプラズマ状態が存在していたはずです。このプラズマの実験室での生成を目指し,米国ブルックヘブン国立研究所の加速器RHICを用いた相対論的原子核衝突実験が約20兆電子ボルトのエネルギーで行われており,数千の粒子が発生する現象を観測しています。平野哲文氏は,実験結果と,自らが世界に先駆けて開発した相対論的流体模型の3次元数値シミュレーションによる理論結果とを詳細に比較することで,生成されたプラズマが粘性の小さい「完全流体」のように振舞うことを示し,当該分野の理論・実験に大きな影響を与えました。平野氏の理論的研究は,最近稼働を始めた欧州合同原子核研究機構(CERN)の新しい加速器LHCを用いたさらに高エネルギーでの原子核衝突実験とも密接に関連し,今後もますますの発展が期待されています。