上田正仁教授が日本学術振興会賞を受賞

大塚 孝治(物理学専攻 教授)

図1

上田正仁教授

上田正仁物理学専攻教授が日本学術振興会賞を受賞されました。第5回(平成20年度)日本学術振興会賞を本研究科物理学専攻教授の上田正仁先生が受賞されました。お祝いを申し上げます。受賞理由は「冷却原子気体の理論」(Theory of Ultracold Atomic Gases)です。それについて簡単に述べると,ボース粒子系が低温において,「ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)」とよばれる特異な現象を起こすことは,アインシュタインによって1924年に理論的に予言されていました。近年,そのようなボース粒子からなる原子の集団(ボース原子気体)が磁気トラップやレーザー冷却を用いて生成され,さらにそれを蒸発冷却によって超低温に冷却することによってBECが実現されています。冷却原子気体は,超流動ヘリウムや超伝導電子系と比肩する新しい量子凝縮相として注目されています。

上田先生はこの分野の研究を早くから幅広く進めてきましたが,強く引力相互作用をするボース凝縮体がボース・ノヴァとよばれる特異な飛散崩壊現象を起こすことを理論的に示し,その準安定性や崩壊メカニズムについても論じ,それがおもな受賞理由になっています。上田先生は,他にも超流動現象など量子多体現象に関するさまざまな独創的研究を展開しており,今後さらに巨視的な量子現象の工学的応用や,冷却原子気体を用いた量子計算などの実験と理論を先導することが期待されています。