小林昭子名誉教授のロレアル-ユネスコ女性科学賞受賞

小林昭子名誉教授
「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の2009年の受賞者に,小林昭子名誉教授が選ばれました。ロレアル-ユネスコ女性科学賞は,世界レベルで科学の発展に寄与した女性科学者を表彰する目的で1998年に創設され,ノーベル賞受賞者を含む有識者で構成された審査委員会で,毎年世界5大陸から5名を選出しています。これまでの受賞者57名のうち,日本人の受賞は,岡崎恒子氏(2000年度),米沢富美子氏(2005年度)に続いて3人目です。
小林先生は,本研究科スペクトルセンター教授のときに,世界で初めて,単一分子性金属の設計と合成に成功しました。これまで単一分子からなる分子性結晶は絶縁体の代表と考えられていました。小林先生は,硫黄原子をたくさん含み,π電子の広がった平面形配位子をもつニッケル錯体Ni(tmdt)2に着目しました。この分子の特徴は,最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO )のエネルギーギャップが小さく,さらに結晶中では平面形分子が上下に重なり合うことによって,分子間に強い電子相互作用が生じ得ることです。その結果,結晶中では近接したHOMOバンドとLUMOバンドが重なり合うことによって,まるで銅のような金属元素のように,一種類の分子が集合しただけで金属結晶となります。小林先生はこのことを分子性金属に関する長年の研究から予測し,見事に一種類の分子からできた最初の金属結晶を実現させました。(Science, 291, 285-287, 2001)。この業績は,分子の概念の変革をもたらし,物質科学領域の発展に大きく寄与しています。
小林先生は,学部生,大学院生,助手,助教授,教授と本学部,本研究科で女性研究者のパイオニアとして教育・研究を先導されてこられました。2006年にご定年退職された後も,日本大学において引き続き,活発に研究を続けられています。今後も,女性科学者を育てる牽引車として大きな役割を果たされることでしょう。