霜田光一名誉教授が文化功労者として顕彰される

霜田光一名誉教授
霜田光一名誉教授が平成20年度文化功労者に選ばれました。霜田先生は1943年に本学理学部物理学科を卒業なされ,1948年本学理学部助教授,1959年から同教授を務められ,本学退職後も現在にいたるまで物理の研究,教育に活発な活動を続けていらっしゃいます。
霜田先生が最初に手がけたのはマイクロ波レーダーの研究であり,終戦後はそれがマイクロ波分光の研究につながっていきました。先生がリードしたマイクロ波分光スペクトルの研究は,その後の日本の電波天文学の発展に大きく寄与しました。また,1950,1960年代のメーザーおよびレーザーの黎明期には,タウンズ(C. H. Townes)等とともにそれらの基礎を構築するという業績を残しています。その後はレーザー分光学の研究に進み,シュタルク分光や二重共鳴などの基礎研究からレーザー応用技術まで幅広い研究を展開しました。
霜田先生は研究だけではなく,理科教育,物理教育にも情熱を傾けてこられました。先生はたくさんの教育的な教科書や参考書を出版していますが私もずいぶんお世話になりました。「エレクトロニクスの基礎」(裳華房,1958)は,私が大学院に入りたてで実験を始めたころはバイブルのようなものでした。比較的新しい本では,「歴史をかえた物理実験」(丸善,1996)は,光速度測定などの歴史的に重要な実験を,原典にもとづきわかりやすく解説したものです。私が駒場で1,2年生を対象とした講義をやるときは,まず最初にこの本を紹介することにしています。
2007年5月には先生の米寿を祝う会が開かれました。会の目玉は先生ご自身による講演で,お祝いに駆けつけた大勢の前で先生のアイデアによる3つの実験の実演と解説がおこなわれました。ひとつは永久磁石のみを使った磁気浮上実験(浮上体は完全に静止している), ふたつ目はレーザーと光ファイバーを使った干渉実験,三つ目は自動浮沈子の実験と,どれも見る者を驚かせ楽しませるものでした。先生のつきることのない物理への愛着と好奇心,そして啓蒙の お気持ちが強く印象に残る催しでした。これからも霜田先生には末永くお元気でご活躍されることを祈念してやみません。