米澤明憲教授がダール・ニゴール賞を受賞

- 仮想世界を動かす並列オブジェクト -

萩谷 昌己(情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 教授)

図1

米澤明憲教授

オブジェクト指向技術のための国際学会(AITO)が2004年に創設した「ダール・ニゴール賞」は,オブジェクト指向技術の分野において卓越した功績を残した人物に与えられるもっとも権威ある賞である。本賞(シニア賞)と若手へのジュニア賞があるが,今年の本賞の受賞者が情報科学科の米澤明憲教授である。米澤教授は歴代4人目の受賞者であり,アジアからは初めての受賞となる。

O.-J.ダール(Ole-Johan Dahl)とK.ニゴール(Kristen Nygaard)は,現在のオブジェクト指向技術の元祖というべきプログラミング言語Simulaを開発した研究者であり,彼らにちなんで創設された「ダール・ニゴール賞」は,オブジェクト指向技術,さらには,現代的なプログラミング言語を研究するものにとって,最高の栄誉というべき賞である。

これまでの本賞の受賞者には,ETHのB.マイヤー(Berbrand Meyer),マイクロソフトのL.カルデリ(Luka Cardelli)がいるが,米澤教授は,とくに並列オブジェクト指向言語を中心に,型システムなどの基礎理論から並列計算機上における実装技術に至るまで,幅広い理論的かつ実践的研究を行うとともに,この分野の数多くの研究者を育てたことが,世界的に高く評価され今回の受賞となった。米澤教授がMIT時代より長年に渡って研究を続けて来た並列オブジェクトの技術は,計算機科学を支える基盤技術のひとつとして確立している。たとえば,仮想世界のひとつであり,世界中に数百万人のユーザがいるリンデン社の「セカンドライフ」システムにおいては,いまも仮想世界の中で,数百万というアバター(化身)が並列オブジェクトとして動き回っているのである。