小林俊行教授のフンボルト賞受賞を祝して

小林俊行教授
本学数理科学研究科の教授で理学部数学科主兼担である小林俊行教授が, 2008年度のフンボルト賞(数学部門)を受賞しました。この賞は,後世に残る業績を挙げ今後も活躍が期待される研究者に贈られるドイツの国際学術賞で,本学理学部関係者としては,過去に物理部門で小柴昌俊特別栄誉教授(1997年),有馬朗人元総長(1988年)などが受賞されています。
小林教授は,無限次元における対称性の破れを代数的に記述する数学理論,リーマン幾何学の古典的な枠組みを超えた不連続群の理論,複素多様体における可視的作用の理論など,代数・幾何・解析にまたがる壮大な理論を次々と創始し構成することに成功しており,数学の新しい研究領域を独創的な手法によって開拓し,数学研究の新しい流れを生み出したことが国際的に評価されて今回の受賞に至りました。
小林教授の研究の特徴は,まったく新しい切り口,物の見方を提示することによって,新しい研究テーマ,研究分野を切り開くとともに,理論の基礎を完成させることにあります。研究分野の近い大島利雄教授の解説によれば,「小林教授の独創的な研究に触発され,リー群を鍵とした代数・幾何・解析にまたがるまったく新しい研究分野が世界的に展開し始めており,今後もこの分野の世界的なリーダーとして研究を進展させて行くことが期待されている。」とのこと。小林教授の研究に対する情熱はこんこんとわく泉のごとく枯れることを知らず,数多くの海外からの招待講演・基調講演を精力的にこなされています。本学の卒業生でもある小林教授は,助手時代から現在に至るまで,学生の教育にも献身的に尽くされています。小林先生には,どうか健康に留意しつつ,今後ますますご活躍されますよう,祈念いたします。