黒岩常祥名誉教授が紫綬褒章とバーンズ賞をダブル受賞

中野 明彦(生物科学専攻 教授)

図1

黒岩常祥名誉教授(写真:大西成明氏)

本学名誉教授である黒岩常祥先生が,植物細胞生物学分野の研究における功績により,平成20年度春の褒章で紫綬褒章を受章され,また,米国植物科学会のもっとも伝統と名誉ある賞であるチャールズ・リード・バーンズ賞を受賞されました。

黒岩先生は,本研究科博士課程を1971年に修了され,岡山大学理学部,基礎生物学研究所を経たのち,1987年から2002年まで本研究科生物科学専攻の教授として,植物細胞生物学の教育,研究に努められました。

黒岩先生の重要な業績は,細胞小器官ミトコンドリアと葉緑体の分裂装置の発見に基づく分裂増殖および母性遺伝のしくみの解明です。植物のもっとも重要な働きのひとつである光合成は,細胞内の葉緑体で行われます。また大部分の生物のエネルギー生産に必須な酸素呼吸は,ミトコンドリアで行われます。これらの細胞小器官は,約20億年前に宿主細胞に共生したバクテリアの子孫であり,現在まで細胞内で増殖し続けてきたと考えられています。黒岩教授は,これらの細胞小器官の分裂装置を発見し,それまで謎に包まれていた細胞小器官の分裂増殖の分子機構を解明しました。また,ミトコンドリアと葉緑体の遺伝子(DNA)は,ほとんどの生物で母方からのみ子孫に伝わる母性遺伝をすることが知られていますが,黒岩教授は,これが雄由来のDNAの選択的分解によることを発見しました。これらの研究を発展させるため,真核生物の要となる原始紅藻(シゾン)を探し出し,ゲノム解読を行い,世界ではじめて真核生物のゲノムの100%解読に成功しました。シゾンは現在,重要なモデル生物として世界中で利用されています。

黒岩先生は,現在も,立教大学極限生命情報研究センター長および理学研究科特任教授として研究の最前線で活躍されています。今後ますますのご健勝を念じてやみません。