大越慎一教授の日本学士院学術奨励賞の受賞を祝して
化学専攻の大越慎一教授は,「磁気化学を基盤とした新規磁気物性の創出に関する研究」で第4回(2007年度)日本学士院学術奨励賞を受賞された。本賞は,日本学術振興会賞を受賞された者の中からとくに優れた研究成果をあげ,今後の活躍がとくに期待される若手研究者に与えられるもので,2007年度は日本学術振興会賞受賞者23名の中から選ばれた5名に与えられた。
大越教授は,物性化学,磁気化学および光化学をベースに,高度な化学合成技術により強磁性物質を作製し,これまでには無かった新規な磁気機能性を多数発見して,分子磁性ならびに強磁性金属錯体分野を先導している。強磁性体の非線形光学効果に早くから着目し,磁化誘起第3高調波発生を世界で初めて観測に成功するなど,非線形磁気光学効果の分野でも先導的な立場にある。
大越教授の受賞対象業績の概要はすでに日本学術振興会賞受賞時に理学部ニュース2007年1月号に掲載されているが,たとえば熱により磁極が二回反転する初めての磁性材料や負の保磁力を示す磁性材料の開発,0次元から3次元までのさまざまな磁気構造を備えた金属錯体強磁性体の初めての合成,光による磁極反転現象(光誘起磁極反転)の発見,湿度応答型強磁性体の実現,化学的刺激応答磁性材料の開発,金属酸化物磁性体として世界最高の保磁力を示すε- Fe2O3ナノロッドの作製に成功など,学術のみならず実用化も期待される新たな材料創生の領域を精力的に切り拓いており,物性化学に新しい視座を与えるものとして,国際的にも高く評価されている。
大越慎一教授の傑出した業績に敬意を表すと共に素晴らしい日本学士院学術奨励賞受賞に対して心よりお祝い申し上げます。