数学科
Professor's comment

理学部数学科
学科長
河野俊丈 教授
ガリレオは「宇宙は数学の言葉で書かれた書物である」という言葉を残しています。事実、数学は自然現象の理解と深くかかわり、たとえば、ニュートンやライプニッツによって、17世紀に生みだされた微積分は、その後の自然科学の飛躍的な進展の基礎になりました。
しばしば抽象的な学問と思われがちな数学ですが、このように実際はさまざまな現象の背後にある概念を定式化し、論証によって創造していく学問であり、幅広い対象に応用できる汎用性を持っています。ですから、現在もまた数学は新しい理論を次々と生みだし続けていますし、現代社会の基盤を支えている各種の分野 — たとえば、情報科学技術の基礎や数理ファイナンス、保険数理などの分野にも幅広く使われているのです。
紀元前4~前3世紀ごろにはユークリッドの「原論」が書かれているなど、長い歴史を持つ数学ですが、現代の数学は19世紀から20世紀にかけて著しく発展しました。数学科では、その現代の数学の基礎となる重要な概念について学びます。
具体的には2年生の冬学期に「代数と幾何学」「集合と位相」「複素解析学I」を受講し、3年生の夏学期に必修科目として群論や多様体論、ルベーグ積分などを、そして冬学期に選択必修科目としてガロア理論やホモロジー論、偏微分方程式、フーリエ変換、確率論、数理物理学、非線型現象などを学びます。さらにこれらの必修科目を中心として講義に対応した演習が開講されるので、具体的な問題を解いて説明をしたり、議論をしたりするなかで、それぞれの科目の理解を深めていくことができます。
また、4年生になりますと、指導教員のもとで数学の専門書を読む少人数のセミナーがおこなわれるため、これまでに学んだ基礎概念がどのように具体的な対象に応用されていくかを体験すると同時に、自分の力で論理的に深く考える力が身につきます。
Students

大学の講義で教わった様々な分野のなかには興味深いものがたくさんあり、自分だけでは学べなかったであろう広範な知識が身につきました。また、数学科には優秀な仲間がたくさんいて、そういう人たちと議論をしながら数学を学んでいくということは、独学では決して得られない貴重な経験だと思います。

初めのうちは数学は趣味程度でいいかと思っていたんですが、講義を聞いたり演習問題を考えたりしているうちに、数学の世界に引き込まれました。私がやっているのは作用素環という分野で、直接イメージすることは難しいのですが、何か手がかりを見つけ、そこから調べていくのはとても面白いと思います。
卒業生の進路
大学院進学 | 78% |
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企業就職 | 7% |
学校等 | 0% |
官公庁 | 0% |
その他 | 15% |
平成22年度では、卒業生46人のうち36名が大学院に進学し、3名が就職しました。就職先としてはコンピュータ関連、金融機関、メーカーなどが主な業種で、数学を必要とする業種が多様化しているのが最近の特徴です。例年、半数以上が大学院に進学し、数理科学研究科の修士課程修了者の半数以上が博士課程に進学します。
History
1877年 | (東京大学創設)理学部 数学物理及び星学科発足 |
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1881年 | 数学物理及び星学科から分離して数学科発足 |
1886年 | (帝国大学に改組)数学科 |
1919年 | (帝国大学令改正)数学科 |
1949年 | (理学部改編)数学科 |
1992年 | 大学院数理科学研究科設置 |
現在に至る |
photo/稲田 平 text/太田 穣