リガクの明日

天文学への思い、そして、日本が世界で戦うために。やるべきことを、どれだけ頑張れるか。
研究者メールインタビュー
中西裕之准教授

鹿児島大学大学院 理工学研究科物理・宇宙専攻

中西裕之准教授

銀河の謎に迫るべく、世界各地で研究を続ける鹿児島大学准教授の中西さん。中学校時代からの思いを貫き、天文学の道をまっすぐに進んできた。遠い宇宙への歩みはいまも着実に続いている。


PROFILE

2000年東京大学理学部天文学科卒業、’05年同大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。同年国立天文台野辺山宇宙電波観測所研究員、’07年オーストラリアCSIRO/ATNF研究員を経て、同年より現職。’11〜’12年オックスフォード大学客員研究員としてイギリスに滞在。

Q1
研究内容を教えてください。
A.

ひと言で言うと、観測的銀河天文学となります。さまざまな方法で銀河を観測し、その構造などを調べています。

たとえば電波望遠鏡の全天観測データを用いることで、天の川銀河の姿を初めて3次元的に描き出しました。それによって銀河系の構造についてさまざまな新しい知見が得られました。

また、系外銀河の星間ガス観測というのもやっています。ここでは複数の銀河において、分子ガスと原子ガスの存在比に着目することで、銀河団内外の銀河の特性の違いを調べています。他には、国際連携で建設が進められている次世代大型電波干渉計Square Kilometer Array (SKA)に関する研究・開発を、日本国内を取りまとめる立場として、進めています。

Q2
なぜ理学部の天文学科へ?
A.

小さい頃から自然科学全般に強い興味がありました。中学3年生あたりから天体望遠鏡を使い出し、高校生の時には部活動でも天体観望するアマチュア天文ファンでした。そのころから理学部の天文学科に行きたいと考えていました。

Q3
中西さんは外国でも研究をされていますが、その経緯や具体的な仕事内容についてお聞かせください。
A.

博士課程修了後、国立天文台野辺山宇宙電波観測所で研究員として2年勤めたあと、CSIRO / Australia Telescope National Facilityの研究員として、半年間オーストラリアに滞在しました。

サイエンスには国境がないので、海外での勤務経験は必須と考えていました。英語が身に付けられる国で、かつ電波天文学の歴史が長い国に行きたいと考えていたところ、ちょうど自分の研究とよくマッチした内容のポスドク募集をオーストラリアで見つけたため、すぐに応募しました。

鹿児島大学で常勤職を得て帰国したのち、同大学の若手研究者海外派遣研修事業に応募して、オックスフォード大学客員研究員として1年間、イギリスに滞在しました。先に述べた国際連携によるSKAの建設において日本が積極的に役割を果たしていくためには、日本人研究者が海外に長期滞在する必要があると感じていました。その思いがあったため、イギリス行きを決めました。

また、夫婦ともども海外での長期生活に興味があったということも大きいです。オックスフォードでは、専門外ながらも電波望遠鏡の開発にも関わったり、また、これに関連して宇宙磁場についての研究にも取りかかるなど、新しいことにもいろいろとチャレンジしました。

Q4
これから進路を考える学生たちに、ひと言アドバイスをお願いします。
A.

進学振り分けのための勉強は大変ですが、そこで学んだことはその後の大切な基盤となります。教養課程で専門とは関係ない内容も履修できるのは素晴らしいことです。日本語テキスト分析で読んだ古典やアラビア語の授業などは今でも時々思い出します。そういうことがきっと将来、異文化の人々と話すときにも役立ちます。サークル活動もやっておいてよかったことのひとつです。そのときの仲間は今でもとても大切です。

やっておけばよかったことを挙げるとすれば、英語力の強化でしょうか。研究者になると、国際会議などでの発表はもちろん、論文の読み書きもすべて英語になります。海外に半年程度滞在しても劇的には英語力が変わらなかった経験から、英語は毎日継続しないと身に付かないというのが今の私の持論です。オンラインレッスンは、英語を練習する機会を手軽に得られるのでお勧めです。また、英語のみならず、スキルアップのための自己投資は常に大切です。

皆さんの希望学科への進学が叶うことを願っています。とはいえ進学振り分けはあくまでも通過点。その後、どれだけ何かに向かって頑張れるかが大切だと思います。

図1

銀河系を斜俯瞰からみた姿。緑色が水素分子(H2)ガス分布、赤が水素原子(HI/天文学ではHIと表して「エイチワン」と読む)ガスの分布。どちらも電波望遠鏡による銀河系のサーベイ観測データを使って作成。

図2

次世代大型電波干渉計SKAの完成予想図。イラストレータによるイメージ。図のようなアンテナが2000~3000台作られる。

text/松井真平