青木研究室(物理学科)

青木研究室(物理学科)

学生の自主性を尊重、世界との距離も近い—。
研究室レポート
青木研

PROFILE

理学系研究科 物理学専攻 青木秀夫 教授
青木秀夫 教授
1973年東京工業大学理学部物理学科卒業。'78年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了、理学博士。同年、東京大学理学部助手。'80年英国ケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所客員研究員。'86年東京大学理学部助教授、'98年より現職。

物性物理学と素粒子物理学—。青木研究室では、この2つの分野が交じり合う先進的な研究に取り組んでいる。研究テーマは、「高温超伝導」と「非平衡」だ。

「高温超伝導」とは、絶対零度に近い極低温でしか起こらないと考えられていた「超伝導」が、それより約100度高い温度でも起こる現象のこと。青木研究室は、これまでの物理学の常識では考えられなかった鉄系の物質や有機物が超伝導体になることが発見された直後から、それらの理論的解明を世界に先駆けて研究している。

一方、「非平衡」とは、系を意図的に不安定にすることで発生した現象の解明を目指す、ここ5~10年で立ち上がってきた物理学の最前線の研究テーマだ。

この2つのテーマに通底するのが、「場の理論」と「ボース=アインシュタイン凝縮」である。微細な素粒子の世界に当てはまると考えられていた「場の理論」が、目で見え、手で触れられる「巨大な」世界でも起こり得る。その一つが超伝導であり、ここでは電子が互いに強い力を及ぼし合っているため、ある意味で「ボース凝縮」しており、その機構や、そのような電子系を乱して新しい状態を作るといった研究の進展は、まさしく物性物理学と素粒子物理学が出合う、物理学の最先端の領域と言える。

修士課程で素粒子の研究室から青木研究室に移った助教の岡隆史さんは、研究の魅力は"実験との近さ"だという。「頭の中だけで考えていたら思いつかない不思議な現象を、実験家が目の前で見せてくれる。その理論の解明に挑むのが研究の醍醐味」

青木研究室の特徴は、学生の自主性を重んじることにある。アインシュタインにもゆかりのある名門校、スイス連邦工科大(ETH)でポスドクとして研究を続ける辻 直人さんは、「自由にやらせてくれるので、自分のテーマやアイディアを持っている人はどんどん伸びるし、やり甲斐がある」と研究室時代を振り返る。

学生はそれぞれにテーマを持って研究に打ち込む。そこには、「各自がその分野での第一人者になれるように」という青木教授の配慮がある。始終、院生同士で議論をし、新しいアイディアを得ることも多い。刺激しあえる環境が整っているのだ。

辻さんのほかにも、カリフォルニア大学バークレー校との二重学籍を持つ渡辺悠樹さんが研究室に在籍している。世界との距離が近いのもこの研究室の特徴といえる。

「国際会議に出させてくれたり、他国の研究者との交流を進めてくれたり、学生が国際的に活躍することを先生が積極的に後押ししてくれる」と2人は口を揃える。

現役の院生に、この研究室を選んだ理由を尋ねてみた。「もともと理科が好きで、この世界がどのようにできているかを知りたくて物理の世界に進みました。理学部は気の合う友人と切磋琢磨しながら学問に打ち込める。それに喜びを感じられる人には最高の世界だと思う」という博士課程1年の見上敬洋さん。

一方、修士課程1年の村上雄太さんは進振り時に迷ったという。「医学部か、理学部の物理か数学かで迷いました。もともと研究の道に進みたいと思っていましたが、将来のことを考えたら、医者のほうがいいかなと……。でも今は、好きな道に進んで充実しています。最終的に物理を選んだのは、友人の影響です。仲間やライバルの存在はやっぱり大切だって思います」

学生⇒教授
逆評定
  • 「学生思いの先生です。私が体を壊したときは、心配して病院まで紹介してくれた」(D1・見上敬洋さん)
  • 「何気ない仕草がお茶目でかわいい」(M1・村上雄太さん)
  • 「研究者であると同時に教育者。多くの研究者を育てている」(助教・岡 隆史さん)

photo/貝塚純一 text/萱原正嗣