大越研究室(化学科)

大越研究室(化学科)

基礎から応用、物理に跨る領域まで、研究の幅は広い。
研究室レポート
大越研

PROFILE

理学系研究科 化学専攻 大越慎一 教授
大越慎一
1989年上智大学理工学部卒業、'95年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター助手、講師、助教授などを経て、2004年同大学院工学系研究科応用化学専攻助教授。'06年より現職。ボルドー大学、パリ大学、ダラム大学の客員教授を兼任。

基礎研究といえども、これまでにない新しいもの、そして、社会の役に立つものをつくる。

大越慎一教授は、その信念にもとづいて、新しい物性や機能を持つ物質を世に送り出してきた。光を当てると金属と半導体の相転移を繰り返すラムダ型黒色酸化チタンナノ微粒子、バリウムフェライト磁石よりはるかに大きい保磁力を持つイプシロン型酸化鉄ナノ微粒子、光や熱によって磁極を反転させる磁性体などだ。

「何をつくるか―。その最初のアイディアが肝心なんです。誰からも相手にされないものはつくっても意味がないし、危険なものをつくってしまうことは絶対に避けなければなりません。私が研究者生活を始めたときに考えたのは、『教科書破り』です。それまでの常識を覆す材料をつくろうと、ひたすらアイディアを巡らせました」

酸化鉄は、この100年の間に研究がし尽くされ、新たな発見はもうないと考えられていた。保磁力を高めるには重い希土類の元素を使うのが常識と考えられていたなかで、大越教授は酸化鉄というありふれた素材から、新しい磁性材料をつくり出すことに成功した。ナノレベルで合成した酸化鉄が、バルク(塊)の酸化鉄とは異なる結晶構造を持ち、保磁力が強くなることを解明したのだ。この酸化鉄ナノ微粒子は、磁気記録媒体や次世代通信用の電波吸収材への応用が期待されている。

「埋蔵量の少ない希土類ではなく、ありふれた物質で新しい物性や機能をつくり出していくことに価値があると考えています。黒色酸化チタンナノ微粒子も同様で、光記録媒体に使われている希少元素を代替する可能性があります」

研究の対象やアプローチの仕方には、物理の要素も強い。だが、大越教授に学問領域へのこだわりはほとんどない。

「磁性は物理で、ものづくりは化学です。でも、その分け方はたまたまそうなっているだけで、研究者としては境界を意識せずに研究に取り組むべきだと思うんです。物理か化学かではなく、社会に役立つものをつくり続けたいんです」

大越教授の信念は、研究スタイルにも表れている。研究成果を社会に還元すべく、企業との共同研究に積極的で、特許も毎年10件前後出願している。

研究室に所属する学生は、研究の幅の広さに魅力を感じている。修士1年の吉清まりえさんが、「基礎研究からものづくりまで、物性も応用も、最初から最後まですべてできる」と語れば、学部4年の田中研二さんは、「理論と実験が両方できるし、化学をベースに物理に近いことや、応用研究もできるのが魅力」と言う。

また、大越研は1学年4名以上、全体で30名を超える大所帯の研究室である。

「学生同士、みんなでワイワイ明るく実験や測定、解析作業をしています。先生や先輩たちとも気軽に話せる和やかな雰囲気」と、修士1年の山田佳奈さん。

学部4年の奈須義総さんは、研究熱の高さが研究室選びの決め手になったという。

「先生は測定に一緒に付き合ってくださいますし、先生も学生も夜遅くまで実験をしています。研究熱心な人たちに囲まれて、充実した研究生活を送っています」

学生⇒教授
逆評定
  • 「研究室にフラッと来ておせんべいを食べる姿がお茶目(笑)」(M1・吉清まりえさん)
  • 「化学科の、お父さんにしたい教授ランキング第1位です!」(B4・田中研二さん)
  • 「子どもみたいにピュアな好奇心たっぷり」(特任助教・生井飛鳥さん)

photo/貝塚純一 text/萱原正嗣