眞田研究室(生物化学科)

眞田研究室(生物化学科)

コラボレーターとして、発見の喜びを分かち合う。
研究室レポート
眞田研

PROFILE

理学系研究科附属 遺伝子実験施設 眞田佳門 准教授
大越慎一
1992年京都大学理学部生物物理学科卒業。2001年米国ハーバード大学医学部病理学部門博士研究員。'06年東京大学大学院理学系研究科助手に。同年科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ研究員。'07年大阪大学大学院医学系研究科准教授を経て、'09年より現職。

脳はどのような過程で形づくられ、どんなシステムで維持されていくのか—。眞田研究室では生命科学的解明をベースとし、神経幹細胞の非対称分裂、神経細胞移動と分化・成熟、神経細胞を維持する機構、そして成体脳における神経新生の研究が進められている。

とくに神経細胞を維持する機構については、マウスにおける実験で、神経細胞に備わる自己防御システムが神経変性疾患を緩和するのに重要であることを立証している。神経細胞に何らかのストレスが加わったときに細胞が死滅してしまうのを抑制するために、神経細胞は自己防御システムを起動する。そこで予め自己防御システムの鍵となる分子を活性化しておけば、神経細胞自体がストレスに強くなり、神経変性が抑制されることを発見したのだ。

この発見は、神経細胞にストレスがかかることで神経変性・神経細胞死が進行するアルツハイマー病やALSの治療・予防に画期的な貢献をする可能性がある。

「この分野の研究はアイディアやインスピレーションが勝負です。もちろん研究としては試行錯誤を重ね、様々な仮説を検証してゆくプロセスがメインとなりますが、たとえば自己防御システムの鍵分子を発見したときも、もともと何かの予測があったわけではありません。意外な分子が、意外な働きを見せてくれたことがきっかけでした。予想もしなかったことが研究者を驚かせてくれると同時に、興奮と楽しさを与えてくれる分野であると言えます」と眞田佳門准教授。

眞田研究室は2007年に立ち上がったばかりの、いわゆる「若い研究室」だ。院生からは、「眞田先生」ではなく「眞田さん」と呼ばれている。現役の実践者同士、"コラボレーター"としての信頼の証だ。

「先生が現役で実験をされているというのが大きな魅力です。実験というのは失敗の積み重ねなので、大事なことは失敗の原因を考えるプロセスにあります。その点、ご自分でも実験をしている先生のアドバイスはいつも実践的で、インスピレーションも新鮮なんです。同じ目線で同じ道を歩いている感覚で取り組むことができます」と、博士課程3年の玉井総一さん。

また、修士課程2年の内藤泰樹さんは「小規模の人数で常にやりとりができるのは、研究への興味が明確であれば最高の環境」だと言う。

「研究はどうしても地味なものです。地味さがなければ生まれないことがたくさんあります。そしてあるひとつの発見は、次の疑問のスタートになる。ときには、"研究者はいつ達成感を感じればいいのか?"という疑問すら抱いてしまう。そんななかで発見に対していつも新鮮な感動を覚えていくためには、いかにモチベーションを維持するかが大切になってきます。そのために、たとえば"病気を治そう"といったシンプルで明確な目標を、あえて持ち続けるようにしています」と眞田准教授。

人類最大の謎のひとつである脳を解明し、その結果を生かし、病気で悩んでいる多くの人たちに治療法として還元する。基礎研究と応用研究の要素の間を行き来することで実りのある研究者として生きていくこと、眞田研究室の主眼はそこにある。

学生⇒教授
逆評定
  • 「独立したての頃から二人三脚で実験をしてきました。『あれやりなさい』ではなくて、意見ぶつけ合いながらの協業でした」(D3・浅田直之さん)
  • 「先生の部屋がいつも開いてて、相談すればいつでも行ける。世間話もしやすいです」(M1・武尾 優さん)

photo/貝塚純一 text/森オウジ