07 化学科

100年先を見据えるも化学、すぐに役立てるもまた化学です。

Presenter

理学部化学科

理学部化学科

  • 無機化学 西原研究室 4年
    犬伏 光さん
  • 生物有機化学 菅研究室 4年
    井関めぐみさん
  • 構造化学 濵口研究室 4年
    廣井卓思さん

「化学は、物理化学、有機化学、無機化学と大きく3分野に分けられるんですけど、僕たち3人はそれぞれの分野からひとりずつ出てきた感じでバラバラですね(笑)」と犬伏さん。物理化学の廣井さんと、有機化学の井関さん、犬伏さんは無機化学を研究している。「僕は、100年後は待てません(笑)。目の前で自分のやったことが見えるから化学を選んだんです」(犬伏さん)

このCGは「遷移金属錯体を用いたクロスカップリング反応による、有機ハロゲン化合物へのシリル基の簡便な導入」を表したものだ。この反応式に犬伏 光さんは「グッと来る」という。

遷移金属錯体を使った有機合成化学は1970年ごろから爆発的発展を遂げてきた分野で、日本から根岸英一、鈴木章博士らのノーベル化学賞受賞者を輩出している。

「構成する元素や関わる結合は違いこそすれ、わたしの研究も、こうした偉大な先人が積み上げた知識の上に立って、さらなる上積みを目指すものです。とくに『遷移金属錯体』の多様な反応性に感動します。他の方法ではおおよそ不可能なのに、これなら特異的に進行するから」

“化学”という言葉でイメージしやすい有機合成に対し、ペプチド創薬を研究しているのが井関めぐみさん。それは、生物がたんぱく質を作る仕組みを応用した合成のあり方だ。

「生物の機能と有機化学の技術を組み合わせることで、役に立つペプチドをつくりだすシステムを開発しています。低分子化合物よりも副作用の少ない薬を得られる期待から、ペプチド創薬を目指してるんです」

“創薬”という、化学科のなかでは目的がはっきりした研究だ。

犬伏さんの場合は、「テーマとしては知識の樹の枝葉に過ぎないかもしれませんが、この反応が未来の誰かの幸福につながればと考えています」と、学術探究への情熱を見せる。

サイエンスであることの面白みを熱っぽく語ってくれるのは、廣井卓思さん。化学の中では物理学に近い分光学という分野で、結晶ができるときの分子の集まり方を、レーザーを使って調べている。

「研究室の教授がつねづね言っているのは、“物理化学を知らないと化学は錬金術になる”ということです。分子がどうして結晶になるか。応用とは離れているけれど、こういう研究なくしては化学の発展はないと思うんです。理学部の基本理念として“100年後に役に立つ科学を”という言葉を聞いたことがあります。いつか役に立つために“理学部では基礎をきちんとやってるぞ”ということを、言っておきたいですね」

廣井さんの言葉に、犬伏さんと井関さんは「ギクッ」と言って笑った。すぐに役立てるも化学、100年先を見据えるもまた化学、なのである。

「有機ハロゲン化合物」(左)が「遷移金属錯体」によって「ヒドロシラン」という化合物と「カップリング」(新しい結合の生成)を行うという反応式。CGは犬伏さんのお手製だ。「ちなみに上の図では、予め金属とヒドロシランが結合したものを描いています」

photo/稲田 平