09 生物学科

生命にとって個性とか意識ってなんなんだろうって思いませんか?

Presenter

生物学科

理学部生物学科

    理学系研究科 生物科学専攻
  • 分子生物学 平良研究室 博士課程3年
    三井優輔さん
  • 動物発生学 武田研究室 博士課程3年
    佐藤 朗さん

ふたりとも“生物”が好きだったという。薬学や生物化学も生物を扱うが、「生き物の“形”に美しさを感じ、興味を持っていた」と佐藤さん。一方、三井さんの興味は自分の頭の中。「子どもの頃から不思議だったんです。どうして足し算できたり、ど忘れしたりするんだろうって」。以来ずっと人の記憶や意識が気になっている。

三井優輔さんと佐藤 朗さんの研究は、発生生物学。生物がどんな仕組みでできあがるのかを研究している。

三井さんはカエルを使って、胚の中で頭になる部分と尻尾になる部分がいかに区別されるのか、その位置情報が与えられる仕組みを、一方、佐藤さんはゼブラフィッシュを使って、神経回路の構造を調べている。佐藤さんの興味は「細胞が1個ずつ違うのはなぜなのか」

実際、ほぼ同じ場所にある細胞同士でも違った性質を持つ。神経系を構成する神経細胞をひとつずつ観察すると、ある神経細胞は軸索を長く伸ばしている一方で、すぐ横の別の神経細胞の軸索は短い。「人間に個性ってありますよね。それが細胞レベルでも見られるのが、なんかとっても生き物らしいなと思うんです」

GFP(緑色蛍光たんぱく質)の発見以降、たんぱく質分子の可視化が可能になり、この分野の研究は飛躍的に発展した。

三井さんが追う「位置情報の仕組み」も、20世紀半ばには数学者チューリングによって「拡散する物質の濃度で決まる」という理論が提唱されていた。それが今は“見える”。「Wnt(ウィント)という、位置情報を与えるたんぱく質が細胞膜上から細胞内に取り込まれる様子を動画として捉えるなど、濃度の差ができる過程を直接観察できますからね!」

ふたりとも生物学の明るい未来に思いを馳せる。技術の発展に伴って、より深く探究できることを実感してきたから。佐藤さんは、今の研究をさらに進め、「多細胞生物が持つ細胞個性の意味や制御機構を明らかにし、多細胞生物を特徴付けているものを知りたい」

三井さんにとって今は「修業の時期」なのだとか。

「いちばん興味を持っているのは人間の記憶や意識。意識の生まれるメカニズムの解明は、生物学に残された最大の課題。技術を身につけ、神経細胞の扱いを覚え……50年先には、人間の頭の中で起こっていることを全部シミュレートできたら、と思っています」

三井さんの研究対象であるアフリカツメガエル。いつでも多くの卵が得られることから、発生生物学のモデルにはうってつけだという。

佐藤さんが扱うゼブラフィッシュ。1〜2日で体の主要な器官ができあがり、2〜3日目には孵化する。飼育も生物学科では重要な仕事だ。

photo/稲田 平