宮田隆志 准教授(天文学科)

宮田隆志 准教授(天文学科)

世界一高い天文台から、未知の宇宙に迫る。
教授インタビュー

PROFILE

理学系研究科 天文学専攻 宮田隆志 准教授
宮田隆志 准教授
1993年京都大学理学部物理学科卒業、'98年東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。 理学博士。 国立天文台ハワイ観測所RCUH研究員、東京大学理学系研究科天文学教育研究センター木曽観測所助教を経て、2008年より現職。

誰も知らない宇宙を見たい—。ならば、自分で特別な望遠鏡をつくろう。ターゲットは星のまわりにあるガスやダスト(ちり)だ。

「地球などの惑星は、太陽のような恒星をとりまくダストの円盤の中で生まれたと考えられています。宇宙空間を漂うダストには、星が生まれてから死ぬまでのさまざまな過程における多くの謎を解き明かすヒントが詰まっています」

観測にあたり、宮田隆志准教授の研究グループが着目したのが中間赤外線だ。可視光に比べて波長が長く、従来の技術では難しかった惑星のまわりに漂うガスやダストを詳しく観測することができる。

2009年11月には、宮田准教授のグループが開発した中間赤外線カメラMAX38が世界で初めて波長38ミクロンの光を地上からとらえることに成功。地上からは絶対に不可能とされていた成果に世界中の研究者から注目が集まった。

この実験の舞台となったのが、南米チリ共和国アタカマ砂漠のチャナントール山頂、標高5640m地点に建設された東京大学アタカマ天文台(TAO)。世界最高地点の天文台としてギネス世界記録に認定されている観測施設である。微弱な赤外線を観測するには、特殊なカメラに加え、大気に影響されない環境が必要だった。大気中の水蒸気が観測の邪魔になるのだ。そうしてたどり着いたのは南米の雲より高い場所にある荒野—。ここで年2回、計4ヵ月間の観測合宿を行っている。

「標高2600m地点にベースキャンプとなるコテージがあり、そこで研究室のメンバーと一緒に自炊生活を送ります。観測の際は酸素マスクをして、4人以上のチームで5640mの山頂に向かいます。ある意味、命がけですよね(笑)。ただ、地球上で誰もやっていない研究ができる興奮は何にも代え難いものがあります」

南米チリのチャナントール山は、他国の研究者たちも集まる、いわば天文学の聖地。世界中の研究者たちと交流できるのも滞在中の楽しみのひとつだという。

そして現在、宮田准教授が注目している研究テーマのひとつが「星が死んだ後、どうなるのか?」である。

寿命をまっとうした星は、ガスを周囲の空間に大量に放出し、その中からダストが形成される。このようなガスやダストはやがて集まり、次の世代の星として再生することはわかっている。では、星が死ぬ時にどのようなダストが出来るのか? 星の死と新たな星の誕生にはどのような関係があるのか? 星のまわりに漂う「ちり」が宇宙施設進化の謎を解くカギを握っているかもしれない……。宮田准教授は観測によって実証的にダストを研究し、宇宙進化のメカニズムを探りたいと考えている。

既存の枠組みのなかでは、先人の発見をなぞることしかできない。だから、自分で装置をつくる。中間赤外線カメラMAX38が未知の扉を開けてくれる。

現在、東京大学アタカマ天文台では、2009年に完成した口径1mの望遠鏡に加え、口径6.5mという巨大望遠鏡を建設計画中。それに装着する新たな中間赤外線カメラの開発も進んでいる。

「宇宙にはまだまだ知らない現象がたくさんあります。自らの手で既存の宇宙観を変えることも夢じゃない。天文学研究の醍醐味はそこにあります」

「新しい宇宙」の探求者の挑戦は続く。

©NASA, ESA, and the Hubble SM4 ERO Team

死につつある星「NGC6032」を撮影した、1/ハッブル宇宙望遠鏡による可視画像。2/近赤外線の画像。3/MAX38で撮影した中間赤外線の画像。4は望遠鏡miniTAOに装着された中間赤外線カメラMAX38。

photo/貝塚純一 text/丸茂健一