大学院生の今

大事なことは能力より興味。
10%の正しさを信じることが研究の根本的な態度になる。

高校時代、祖国の恩師との出会いをきっかけに数学へ興味を持った劉さん。大学院では、産学共同のプロジェクトにも参加し、数学が実社会の問題解決に役立っていることを実感している。

劉さんの研究内容を教えてください。

劉逸侃さん

数理科学研究科
山本研究室 修士課程1年
劉 逸侃さん  RYU IKKAN

2005年中国の復旦大学数学科学学院入学、’09年同大学卒業、’10年同学院計算数学専攻修士課程退学、同年東京大学大学院数理科学研究科外国人研究生、’11年4月より同研究科修士課程。’12年4月より同博士課程進学予定。

私の専攻分野は、「偏微分方程式の逆問題」というものです。逆問題とは、偏微分方程式に関して観測データ(結果)から現象の原因を導く問題です。具体的には、結晶の「組織生成(結晶体)」と「異常拡散」の問題を扱っています。(復旦大学での)修士論文では、結晶化という現象を支配する波動方程式を導き出し、観測データを基に結晶化速度を計算しました。異常拡散の問題では、汚染物質が不均質媒質でどのように拡散するかを研究しています。この研究は、例えば放射能汚染や不法投棄といった社会問題など、いろいろな分野への応用が期待されています。

数学科を選んだ理由を教えてください。

高校時代の先生の影響が大きいです。その先生は中国で数学オリンピックコーチの経験もあり、いろいろな方法で数学のおもしろさを教えてくれました。多角的な視点を持ち、問題を独力で解く大切さを学びました。その後、上海の復旦大学で情報処理と計算数学を学び、数値計算を専攻し修士1年まで進みました。数学の分野で東京大学はアジアのトップレベルで、解析学の研究に関しても伝統があります。修士1年のとき、奨学金を得て、元指導教員の程 晋教授の推薦で山本研究室に来る機会を得ました。

中国と日本、両方の大学で修士課程を経験していますね。

日本の大学院生は皆、自分の進む道を承知している印象を受けます。アカデミックな研究を最優先にしますし、セミナー室で徹夜するほどの勉強量には驚きました。中国と日本のシステムの違いは、日本に来てから知りました。日本では数学科というと純粋数学を主に勉強するような印象がありますが、中国の大学の数学科では、計算数学のような応用数学もウェイトが大きいです。最近の研究手段は世界的に、理論より先に計算(シミュレーション)から入る傾向があると思います。新しい問題を発見したときは、まず試しに計算してみる。その結果から突破口を探ります。今後は理論だけでなく、計算能力の高さも研究手段のひとつになると思っています。

研究を進めながら実感したことは、先生の問題発見力の高さです。その点が学生と先生の決定的な違いでしょう。研究をするうえでとても大切なことを学んでいます。また、数学はディスカッションしてアイディアを得ることが重要な分野です。大学院では外国人とのやりとりも増えますから、語学も含め、日々コミュニケーション力を磨いています。

一日のスケジュール

8:30 起床
9:30-12:00 登校
院生室で勉強と研究
(ペンで証明と計算など、
またはパソコンで数値
シミュレーションをします)
12:00 学食で昼食
13:00-15:00 授業を受けます
(予習復習も含む)
15:30-16:30 コモンルームで
コーヒーを飲みながら、
先生や院生と雑談
16:30-18:00 セミナーに参加して、
指導教員の指導で
専門書を輪講
18:00-19:00 学食または外で夕食
(留学生たちと一緒が普通)
19:00-21:00 本や論文を読みながら
勉強と研究を続ける
22:00-1:00 帰宅。家族や友人と連絡
(日本語の勉強と称して
テレビを見ます)
1:00 就寝

Photo:稲田 平 Text:松井真平