微光流星の観測から地球の周辺環境を探る

大澤 亮(天文学専攻 特任助教)

酒向重行(天文学専攻 准教授)

 


彗星や小惑星といった太陽系小天体は,自転や衝突,彗星活動などによって微小な固体粒子 ( ダスト) を惑星間空間に放出している。こうしたダストは太陽系小天体の性質を反映している。地球近傍の空間もダストによって満たされており,地球に突入したダストは流星として観測される。流星の観測は太陽系小天体の表面物質を1粒ずつ測定できるユニークな研究手法であり,また実験室では再現が難しい高速衝突によるプラズマ物理の実験としての側面も持っている。

地球近傍に存在するダストは質量が1μg程度の粒子が主たる構成要素だと考えられている。しかし,こうしたダストが引き起こす流星は暗すぎるため,これまではレーダーによる観測が主流であった。流星現象からダスト粒子の性質を引き出すため,レーダーと光学観測による測定を合わせることが重要である。

そこで,われわれは東アジア最大の大気レーダーである京都大学生存圏研究所のMU ( エムユー) レーダーと東京大学木曽観測所で開発した世界最大のビデオカメラ「トモエゴゼン」を用いて流星をレーダーと光学観測で同時に測定するプロジェクトを遂行した。トモエゴゼンの高い感度をもってすれば,これまでレーダーでしか観測できなかった微小なダストによる流星も検出できる。4日間の観測で流星群に属さない散在流星を計228件捉え,レーダー観測の測定量 (レーダー反射断面積) から可視光での明るさを推定するための関係式を実験的に得ることができた。


東京大学木曽観測所「トモエゴゼン」と京都大学MUレーダーによる同時観測の概要。滋賀県にあるMUレーダー施設上空100kmを流れた流星をレーダーと光学観測で同時に捉えた。    

この関係式を用いることで,2009-2015年にかけてMUレーダーが蓄積してきた流星観測のデータを活かすことができるようになった。レーダー反射断面積から可視光での明るさを見積もり,さらに明るさと速度から質量に変換することで,地球に散在流星として降り注いでくる質量のレートを計算した。MUレーダーが測定した範囲では,地球に降り注いでくるダストの総量は一日あたりおよそ10³kgほどに相当することがわかった。

新しい観測装置の開発によって,暗い流星を光学的観測から研究するための道を拓くことができた。今回は散在流星の明るさと数にのみ焦点を絞って研究したが,観測対象を流星群に広げる,分光観測によってダスト粒子の組成を明らかにするなどの発展が望める。2020年12月には探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウからのサンプルリターンを見事に成功させた。こうしたサンプルとの比較も興味深い発展である。流星の観測から地球周辺のダストの性質を探る試みはまだ始まったばかりである。

本研究は,R. Ohsawa et al ., Planetary and Space Science 194, 105011 (2020) に掲載された。

(2020年11月11日プレスリリース)

理学部ニュース2021年3月号掲載



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