恐竜の初期進化を促した超大陸のメガ・モンスーン

池田 昌之(地球惑星科学専攻 准教授)

 


中生代は「恐竜の時代」とよばれるが,最近の研究によると,最初の5000万年間の三畳紀は恐竜にとって試練の時代だった。ペルム紀/三畳紀境界の天変地異で荒廃した大地にはワニの祖先が繁栄し,彼らが三畳紀末に大量絶滅するまで,恐竜は脇役に過ぎなかった。当時の大気CO2濃度は 現在より倍以上高く,しかも1000万年スケールで倍近く変動していた。これに合わせるように,降水量や海水温が激しく変動したが,そのメカニズムの解明には至っていなかった。

メカニズムのヒントは日本の地層にあった。日本には,超大洋パンサラッサ深海の地層(チャート) がプレートテクトニクスの結果,陸上に露出している。このチャートの縞模様が地球軌道要素の変化(ミランコビッチ・サイクル)に関連したことが示された。ミランコビッチ・サイクルは4万年から10万年周期の氷期−間氷期サイクルの要因として有名であるが,数1000万年スケールでも変化し,モンスンなど地球環境にさまざまな影響を与える。この周期性がチャート層の厚さの周期から検出された。

 
 
4回回転対称人工ナノ薄膜構造を用いた,可視光円偏光から真空紫外円偏光への波長変換の概念図

モンスーンは,日射に伴う陸と海の熱容量差から生じる季節風である。海から陸への風は,日本の梅雨のように,陸域に降雨をもたらす。温暖で氷床がない三畳紀にも,広大な超大陸パンゲアで はモンスーンが活発化したため,メガ・モンスーンとよばれる。メガ・モンスーン地域が日射変化によって増減し,陸域の風化を促して,海洋へ栄養塩を供給する。その結果,放散虫などのシリカの殻を作るプランクトンの堆積速度が変化し,日本のチャートの縞模様が形成された。

風化は地質学的時間スケールでの大気CO2変動の主要因でもある。世界各地の地質記録を比較した結果,メガ・モンスーンによる風化は大気CO2を消費し,寒冷化を引き起こしたことが明らかになった。

メガ・モンスーンが強化し寒冷化した時期には,恐竜の足跡も大型化した。寒冷地の恒温動物は温暖な地域より熱の放散を防ぐため,大型化傾向がある。超温暖な三畳紀には熱を発散するために小型化する必要があったが,風化による寒冷化は大型化を促す。恵みの雨は食物も増加するため,大型化に拍車を掛けた。湿潤化による砂漠の縮小により,恐竜は生息域を拡大し, パンゲアの南から北まで分布を広げた。恐竜は新天地に順応しながら多様化し,繁栄の準備を進めただろう。

ただし,日射変化の振幅は僅かであり,数値計算によれば大規模な気候変化を起こすには何らかの増幅機構が必要だ。モンスーンは,砂漠化や植性変化を介し水循環のフィードバックを加速する。超大陸パンゲアは砂漠も広大で,被子植物ではなく裸子植物が繁栄するなど,現在と異なる気候と生態系の相互作用が働いた可能性がある。しかし,何がモンスーンを強化した かは未解明である。モンスーンは現在を含め地球史を通じて,地球環境や生態系に多大な影響を与えてきた。 恐竜の初期進化の謎解きからも,気候システムの挙動に関する新たな一面の理解が進むことが期待される。

本研究成果は,M. Ikeda et al ., Scientific Reports 10, 11984(2020)に掲載された。

(2020年7月23日プレスリリース)

理学部ニュース2020年11月号掲載

 

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