「溶液における分子認識と自己集合の原理」

平岡 秀一(総合文化研究科 教授)


平岡秀一著
「溶液における分子認識と自己集合の原理」:分子間相互作用
サイエンス社(2017年出版)
ISBN 978-4-7819-1403-9)

自然界に存在するほとんどの分子は周りに存在する他の分子と相互作用しており,生命がもつ精巧かつ複雑な機能も元を辿れば多種多様な分子の間に働く相互作用に基づいている。そこで,生命分子,人工分子にかかわらず,これらの分子の間にどのような相互作用が働いているか?に関心が行くのは自然なことだ。本書は,さまざまな分子間相互作用を紹介し,これらに基づいて形成される複合体や分子自己集合体まで取り扱っている。

本書には二つの特徴がある。一つは,共有結合との比較から分子間相互作用を考える点である。原子間を繋ぐという意味では似た二つを比較することで,両者の理解を深める狙いがある。二つ目は,溶媒分子の効果である。溶液中では,着目している分子よりも数的に断然優勢な溶媒分子の振る舞いにも気を留めないと,真の理解ができない。特に水中における分子間相互作用は,水の特異な性質の影響を受け,他の溶媒中とは異なる。また,生命現象は水中で起こるので,水中における分子間相互作用の理解が重要になるため,本書では水中における現象の理解にやや重きを置いている。

本書は2Sセメスターの「超分子化学」という総合科目の教科書として利用している。毎年,講義の初めは,反応式の右辺にも左辺にも出てこない溶媒に気も留めてこなかった受講生が,講義が進むにつれて次第に,溶媒分子の「気持ち」まで考慮して現象を解釈しようとする姿を見ると嬉しくなる。

理学部ニュース2020年9月号掲載

 

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