理学図書館あれこれ
水落 利明(農学系総務課図書チーム 係長)

2018(平成30)年度に7つの図書室が統合し,理学図書館が誕生した。その中でも,物理,天文,地惑,生物,生物化学の各専攻図書室は物理的にも1つに集約された。これほどの規模の統合は聞いたことがなく,歴史的一大事業であったと思う。この統合は,各専攻の先生方,中央事務の皆様のご尽力があって初めてなし得たものである。改めて,感謝申し上げたい。
利用者の皆様には閉室などでご不便をお掛けしたと思うが,当時はあれで精一杯だった。むしろ,あれだけの閉室期間でよく引越しができたな,と思っている。サービスを制限していたとはいえ,専攻図書室を開室しながら引越し準備作業をするのはなかなかの難事業だった。統合後も規定類・運営方針・マニュアル類の整備などやることは山積みであり,できればもう経験したくはない。
さて,まだ整理できていない資料も多数あるが,統合の混乱もだいぶ落ち着いてきた理学図書館である。「前例がない」 ことを理由に色々なサービスやイベントを企画させていただいた。全くの新しい図書館で,今まで個人的に温めてきた企画をこれでもかと好きなようにやらせていただいたのである。 懐の深い周囲の方々に感謝である。心の中では「余計な仕事を増やすな」と思われていたかも知れないが。これらの企画も,図書館が統合したからこそ出来たものだと思う。専攻図書室の1~2の人数ではとても出来なかったであろう。
まず,オープンキャンパスに合わせて貴重書の展示を行った。ちょっと物足りない感じがしたので,翌年は展示ケースを増やし,職員による解説も行った。また,貴重書の「Fauna Japonica日本動物誌」から動物の図を使用したオリジナルクリアファイルを作成した。これはデザインも私が行ったものであるが,理学部の入学者・進学者への配付のほか,理学部への寄付をした方へも送られているそうである。なかなか評判が良いようでほっとしている。他にも,理学図書館セルフツアーの開催,オリジナルしおりの作成,理学部ニュースへの貴重書の掲載,ミニ展示の企画,貴重書解説会など,多くのことをやらせていただいた。

これらを実行しようと思った原因は,実は「危機感」からくるものであった。電子ジャーナルや電子ブックが多く見られるようになり,それに伴い,紙の本の購入が減っていった。 学内のネットに繋げれば世界中のどこからでも資料にアクセスできるようになった。喜ばしいことではあるのだが,そこで「あれ?図書館っていらなくない?」となりはしないだろうか。電子ジャーナルの契約なども図書館で行ってはいるのだが,利用者からは見えにくい。ならば見える形で図書館の存在をアピールしようではないか,というわけである。
実はこれ以外にも失敗している企画などもあり,反省することしきりである。少しは理学図書館の存在をアピールできたのだろうか。「図書館って色々やっているな」と思 っていただければ良いのだが。
あと,個人的に思っていることだが,理学図書館をさまざまな「場」として使って欲しいと思っている2。理学図 書館のラウンジを貸し切りにして,講演などに使っていただくのも良いと思う。図書館が,教員・学生・職員を結ぶ拠点になれればと願っている。
1. 2020年3月まで理学系総務課図書チーム係長
2. 理学図書館はコロナ禍の影響で利用を一部制限しております。最新情報は,理学図書館ホームページをご覧ください。
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理学部ニュース2020年7月号掲載