特別記事 新型コロナウイルス感染症に対する理学部の対応

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界規模で爆発的に拡大したことを受け,
東京大学では全ての構成員と学生の皆さんの健康を最優先するとともに,
学びの機会を失わないよう「オンライン講義への全面的な移行」を進めました
(2020年4月21日東京大学総長メッセージより一部改編)。
これにともなう理学系研究科・理学部でのさまざまな対応・対策について,
理学系研究科長・理学部長の星野真弘教授と,
教務委員長の川北篤教授から皆さんへお伝えいたします。(広報誌編集委員会)

新型コロナウィルス感染症への理学部の対応  
星野 真弘(理学系研究科長・理学部長/地球惑星科学専攻 教授)

いつもは学生で賑わう4月の本郷キャンパスですが,今年はひっそりと静まり返ってい ます。2020年4月8日(水)の新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言により,東京大学の活動制限レベルが引き上げられ,教育研究活動は一転しました。コロナ禍が教育研究活動に影響を及ぼし始めたのは2月上旬からで,最初は中国で開催予定のサマースクールや国際会議の延期・中止など,特定の国や感染地域だけに限定したものでしたが,瞬く間に世界中に感染が広がるパンデミックとなってしまいました。現代社会の隙をついた新型コロナウイルスですが,理学部では以下のような教育研究活動の取組みを行っています。

まず理学部の授業は,教務委員会を中心に対応策を検討していただき,4月最初の2週間の準備期間を経て2020年4月17日(金)からはオンライン講義を実施することにしました。最初は学生の自宅・下宿からのネットワーク環境が心配でしたが,Wi-Fiルーターなどの貸出を行い,何とかスタートできたのではないかと思います。またオンライン講義では,学生と教員の双方向のコミュニケーションが制限されるので,教育効果が下がるのではないかと心配でしたが,予想以上に学生も教員もオンライン講義への順応が早いようです。もちろん色々と大変なのですが,教員のITC-LMS(Information Technology Center - Learning Management System)*を利用した講義などの工夫もあり,学生の中にはむしろオンライン講義のほうが集中できるとか,通学時間が節約でき時間に余裕が出来たなどのポジティブな声も届いています。

いっぽうでは,情報化時代に相応しいオンライン講義は何とか始められましたが,友人とのコミュニケーションが激減したことにより心のケアが必要な学生もでてきているようです。そのような方は遠慮せずに教員に相談するなり,理学部の学生支援室や大学本部の学生相談所を利用するなどして下さい。また経済的に学業を続けることが困難になって悩んでいる方は,授業料免除や奨学金制度をはじめ,理学部の寄付基金をもとにした経済支援も行っていますので,まずは理学部の学務課までお問い合わせ下さい。

また講義以外の教育活動として,座学が出来ない実習・演習は,スケジュールの柔軟運用をするなどして出来る限り従来と同等の教育内容を目指します。学期末向けての試験や大学院入試などは,筆記試験が困難な場合に備えて,オンラインなどを活用した新しい方法での公平公正な評価を検討しています。これまでの慣習に囚われないwith-コロナ時代の対策が,将来の新しい方式になるかも知れません。

大学活動制限レベル3での研究活動は,研究を中断することにより甚大な損失を被るもの,生物の世話や冷媒の補充,計算機サーバーの維持などに制限されており,それに携わる研究スタッフだけ(事情により大学院生・研究員も可)が研究室への立入りが許可されています。最先端研究を行っている研究室には厳しい制限ですが,クラスター感染が出ないように重ねてご理解をお願いします。

今回のコロナ禍は,いつになれば収束するのか,収束しても第2波が再び襲うのではないか,完全終息には長期戦の備えが必要であるとか,先を見通せないことが多いのですが,教育研究活動の低下を最小限に食い止め,post-コロナに向けて教育研究を再開するために,皆様のお知恵を頂ければと考えています。この記事が読者に届くころにはパンデミックが収束に向かっていることを祈っています。

* 東京大学情報基盤センターが本学の教職員および学生に対して提供する学習管理システム

 

オンライン講義の開始にあたって 
川北 篤(教務委員長/植物園 教授) 

2020年度の新学期は,これまで直面したことのない状況の中で迎えることになりました。都内における新型コロナウイルス感染症の急拡大を受け,新年度を前に東京大学全体で対面による授業(講義,演習,実験,実習)を全面的に禁止する措置がとられました。理学部・理学系 研究科では4月初めの2週間をオンライン講義の準備期間と位置づけ,すべての授業を休講にしました。その間,各学科・専攻で講義のオンライン化に向けた準備が進められ,2020年4 月17日(金)から順次講義が始まりました。オンラインによる講義を多くの教員が未経験の中,このように早期に講義を開始できたのは,学生が授業を受けられない状態をこれ以上引き延ばさないよう,教職員の皆様が一丸となって開講のための準備に尽力された結果です。

オンライン講義の実施にあたっては,学生のインターネットの接続環境の違いにより学習機 会に差が生じないよう,必要な支援を行いました。 新学期を前に理学系の学部・大学院の全学生を対象にアンケートを行い,自宅に十分な接続環境が整っていない学生に無償でWi-Fiのルーターを貸与しました。同様の支援は大学本部によって全学的にも進められています。この原稿を書いている時点で講義開始から約2週間が経ち,今のところ大きな混乱は見られていませんが,学生側の通信の一時的な不具合などにより講義が正常に受講できないケースが一部で生じています。こうした場合には講義録画の視聴や補講などで対応し,学生が安心してオンライン講義に臨めるための対策を講じています。

新学期を前に学生に向けたアンケートでは,講義がオンラインになることで教員に質問がし にくくなることを心配する声がありました。オンライン講義ではこれまでと異なる形式での対 話に戸惑うこともあると思います。しかし,学生の皆さんはぜひ積極的にオンラインツールの コメント機能や講義後の画面越し,あるいはメール等で教員に問いかけてみてください。対面での講義の時と同じように,教員は学生からの質問に常に親身に答えてくれるはずです。

講義のオンライン化が進む一方で,演習・実験・実習科目はまだ実施の目処が立っていませ ん。理学部の各学科では,実践的な探究のためのこれらの科目に多くの時間をあてていますが, オンラインではその効果が得られないため,開講を見合わせています。新型コロナウイルス感染症の影響がこの先いつまで続くかが見通せない中で,どのようにこれらの実践科目に十分な時間を確保するかが今後の大きな課題です。そのための大幅な授業日程の改変を含めた検討が各学科で進められています。

オンライン講義の準備にあたっては,接続テストに多くの学生の皆さんが参加するなど,教 員と学生が協力し合ってこの困難な状況を克服していこうとする様子が印象的でした。今後も 新型コロナウイルス感染症の状況の変化に合わせながら,学生の皆さんが安心して,着実に勉 学を修めることができるための方策を探っていきます。何卒,皆様のご理解とご協力をよろし くお願い申し上げます。

理学部ニュース2020年5月号掲載

 


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